連載第3回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

酒米の個性を巧みに引き出し、絶妙なバランスを醸す『而今・高砂』17本を飲み比べてみた

更新日2021.10.15

この記事をシェアする

ShareTweet
特集画像1

三重県名張市に1818年から蔵を構える木屋正酒造。「而今」という銘柄が誕生したのは2005年。 6代目の蔵元杜氏・大西唯克氏が、「過去に囚われず、未来にも囚われず、今をただ精一杯に生きる」という力強く高い志を表す禅語を銘柄名に掲げて立ち上げたのだ。

特集画像2

洗米から麹づくりまですべて手作業、時間をかけてゆっくり発酵させ、味わいのバランスを見事に整えた日本酒は、ファン垂涎の逸品として全国にその名を知られている。みずみずしいフレッシュ感、フルーティな香りと味わいと言われる「而今」だが、使用している酒米や火入れ、無濾過などの製法によって当然香りも味わいも違ってくる。また、2017年から食中酒をコンセプトにつくり始めた「高砂 松喰鶴」。クラシック感と品格のあるラベルからも想像できる美しくも控えめな味わいで料理を引き立ててくれるシリーズだ。それぞれの酒米の特徴を思い浮かべながらどのようなバランスでまとめられているのか、そのこだわりを飲み比べてみた。

特集画像3

酒蔵情報を見る

1. 而今 純米大吟醸 特等雄町

とても上品な麹の香りと、蜜をともなった綺麗な吟醸香が上がってくる。イチジクのような気持ちのいい甘みが長く続くので、お酒だけで充分に楽しめる。熟れたフルーツやクリームチーズを使ったおつまみとなら、お酒の余韻をさらに伸ばしてくれる。

この日本酒詳細を見る

2. 而今 純米大吟醸 Nabari

透明感のあるベリー系の吟醸感がしっかり上がってくるが、奥底には麹の香りが広がっていて、そのバランス感が素晴らしい。生ハム、塩いくらなど塩のミネラル感との相性が良い。決して重くなく、軽い苦味を伴った甘みが食欲を刺激するので食中酒にぴったり。

この日本酒詳細を見る

3. 而今 大吟醸

とても穏やかで清々しい香り。ボリューム感のある大吟醸ではなく、透き通った美しい上品さが魅力の、完成度が高い1本。料理を合わせるというよりも、ジャンルは問わず、新鮮な野菜のみずみずしさを生かした前菜に合わせたい。

この日本酒詳細を見る

4. 而今 純米大吟醸 白鶴錦

生クリームのような乳酸系の香りだが、口に入れるとスムーズに喉に流れ、すっと消えていく。甘み軽やかで酸味も強くないが、伸びがよく、輪郭はしっかり感じられバランスがとれていて飲みやすい。日本酒初心者に薦めたい1本。サワラのようなあっさりした魚や貝類、また鶏肉をしっとり調理したフレンチにも。

この日本酒詳細を見る

5. 而今 純米吟醸 東条秋津山田錦

若干複雑性のある、柑橘の皮の香り。やや甘めだが、晩柑のような甘みの少ない日本の柑橘系の酸味と香りを含んでいるので、味の構成が美しく、日本らしさを感じる味わい。たとえば、天ぷらのように鮮度の良い食材に少し火を通すような、シンプルな味わいの料理に合わせたい。

この日本酒詳細を見る

6. 而今 木桶生酛 赤磐雄町

穏やかで柚子のような香りがある。まるで柚子をジャムにしたときのような、まろやかさのある香り。旨みと厚みのある乳酸系の酸味の質が素晴らしい。ふくよかで力強いので、シャトーブリアンなど、上質の牛肉のステーキに合わせたい。

この日本酒詳細を見る

7. 而今 純米吟醸 吉川山田錦

香り穏やかでスーッとする清涼感のある香り。口に入れるととてもなめらかで、きめ細かい酒質で飲みやすい。しっとりした食材や煮物、椀ものにあわせると、この日本酒ならではのきめの細かさが生きる。

この日本酒詳細を見る

8. 而今 純米吟醸 東条山田錦

苺のようなフルーティな香りで、まさに美味しい吟醸酒の典型的スタイル。複雑な要素がないので、誰が飲んでも美味しいと思ってもらえる1本。お酒だけで飲むのがお薦め。リラックスできる香りで優しい味わいなので、就寝前の一杯にも。

この日本酒詳細を見る

9. 而今 純米吟醸 愛山 火入れ

ハーブ、ベリー、柑橘系の香りがバランスよく詰まっていて、甘く爽やかな香りが心地よい。味わいも香りに準じていているのでワイン好きにもってこいのお酒。コースの最後のデザートと合わせてみても。家飲みならハーゲンダッツと合わせてみては?

この日本酒詳細を見る

10. 而今 純米吟醸 山田錦 火入れ

而今の中では、旨味の量、甘辛のバランス、後切れなどすべてが真ん中にある「基本」のお酒。若干の苦味があることにより味に奥行きが出て飽きずに飲み続けられる万能な食中酒。冷やして平杯で色々なお惣菜と合わせて飲みたい。カジュアルな家飲みにぴったり。

この日本酒詳細を見る

11. 而今 純米吟醸 千本錦 火入れ

セリや三つ葉の香りを嗅いだ時のような、穏やかだがスーッとした香りが特徴。口あたりは滑らかで、きめが細かく飲みやすい。クラシックな純米吟醸好きにお薦め。どんな料理にも寄り添う万能選手だが、カニしんじょう、生湯葉の銀あんかけ、若竹煮など素朴な素材の風味を生かした和食の椀ものや蒸し物に合う。

この日本酒詳細を見る

12. 而今 純米吟醸 朝日

マンダリンオレンジの香りでやや甘口だが、舌の上をすべるようなテクスチャーなので、辛口好きな人が飲んでもさっぱりと軽快に飲める。和食よりもイタリアンビュッフェやパーティなどで、かなり冷やして白ワインのように飲むのがお薦め。

この日本酒詳細を見る

13. 而今 純米吟醸 八反錦 火入れ

やや重量感を感じる穀物感、吟醸感も強くパイナップルのような香り。最後に若干の苦味があるが、飲むとバランスがいい。ジューシーでシャープな酸が油を切ってくれるので、串揚店、焼鳥店にあると嬉しい1本。串揚げはソースのフルーツ感と相性よし。焼き鳥は、苦味のミネラル感に合わせてどちらかといえば塩で。

この日本酒詳細を見る

14. 而今 特別純米 火入れ

純米酒ながら、重ったるさがなく綺麗な味わい。非常に飲みやすく軽快な味わい。まとまりが良く穏やかな味わいなので、蕎麦屋さんのだし巻き卵などのおつまみから、蕎麦、天ざるなどまで全般に合う。常温もお薦め。

この日本酒詳細を見る

15. 高砂 純米大吟醸 生酛 山田錦 松喰鶴

みずみずしいが、あんずや黄桃のようなコクのある甘みで、和のフルーツのエッセンスを感じる。味わいは敢えてこじんまり、丸く収まるように仕込まれている印象。品格のある味わいなので、鮨や柑橘を絞っていただくフグちりなどに合わせてゆっくり愉しみたい。

この日本酒詳細を見る

16. 高砂 純米大吟醸 生酛 雄町 松喰鶴

最初、黒糖のような穏やかな香りだが、口に含むとパンチのある香りに変わる。ドライフルーツのような香りも上がってきて、エキスのような濃縮感と太めの酸味があり芳醇。ぜひワイングラスで。フレンチ、ジビエ、鉄板料理から鰻まで、ジャンルは問わず厳選素材で味を追求するお店に置くべき1本。

この日本酒詳細を見る

17. 高砂 純米大吟醸 火入れ 松喰鶴

昔懐かしい正統派の吟醸酒の香り。綺麗な味わいと喉越し。流れ落ちていく味の消え方も素晴らしく、お手本にすべき模範的な吟醸酒といえる。綺麗にひいたお出汁の椀ものをはじめ品格のある懐石料理に合わせたい。

この日本酒詳細を見る
まとめ1

芳醇で旨味が強く、果実酒のようにジューシーな「而今」。華やかな香りをワイングラスで愉しみながら、お酒だけで味わいたいと思わせる完成度の高いバランスが特徴。 注目すべきは、酒米の個性の捉え方。見極めが見事で、それぞれの魅力を引き出しながら、甘・辛・旨・酸、そして香りやコク、キレ、余韻の強弱を整えていること。 蔵元杜氏・大西氏の感性の高さや考えの深さ、さらには信念を曲げず高みを目指す意志の強さを感じることができる。また、時代の変化や、大西氏が年齢を重ねたことによる柔軟性も感じられるようになり、キレ味の表現がより洗練を増している印象を受ける。この美しいキレ味、余韻に合わせたい料理の幅もどんどん広がっている。 「高砂 松喰鶴」は、とにかく上品で綺麗だが、派手過ぎない控えめさで料理を引き立てる美しき名脇役といえる逸品。和洋問わず、上質の食材の美味さを引き出した料理と合わせたいシリーズだ。「而今」も「高砂」も今後の展開が益々楽しみだ。

テイスティングコメント:多田正樹 文章:藤田実子 写真:JCSC・木屋正酒造 【多田正樹プロフィール】 1969年 島根県松江市生まれ 1990年 都内フランス料理店を中心に接客を担当 2000年 新宿京王プラザホテル ・日本酒バー【天乃川】、和食、懐石料理店舗にて日本酒選定・サービス ・ホテル独自の日本酒開発 2011年 神楽坂【ふしきの】酒番 2014年 神楽坂【月よみ庵】店長兼酒番 2017年  神楽坂【蒼穹】店主 現在 【ブレス合同会社】 『和酒を扱う料理店のご相談係』 『日本酒テイスター』 『佳酒と古陶磁 出張人』として料理人さん、古美術商さんと共に活動中
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
TOP