連載第7回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

限りなく生酒に近いチャレンジングな『作 インプレッション』シリーズと、地域ブランド『鈴鹿川』計14本を飲み比べてみた

更新日Dec 24, 2021

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鈴鹿山脈の伏流水と伊勢平野の良質な米で“味酒(うまさけ)を醸す” 三重県鈴鹿市にある清水清三郎商店。温度調整機能を備えた小型タンクで四季醸造を行い、種類豊富なのも特徴。前回は『作』のレギュラーシリーズ、プレミアムシリーズを飲み比べたが、今回は、インプレッションシリーズと地元限定酒『イセノナミ』、『鈴鹿川』計14本を飲み比べてみた。

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“インプレッション”は、『作』のレギュラーシリーズ『恵乃智』『玄乃智』『穂乃智』『中取り』それぞれを、限りなく生酒に近づけたシリーズだ。品質が劣化しないよう火入れ酒しか出荷しない清水清三郎商店だが、タンクからの汲みたてを飲んだようなフレッシュな味わいを届けたいとさまざまな火入れ方法を試行錯誤で研究を重ねていた。2011年から6年間は“プロトタイプ”というネーミングで販売されていたが、2017年、味わいが安定してきたことから“インプレッション”と名前を変えてリリース。生酒と紹介しても恐らく誰も疑わないとほど生き生きとしたフレッシュな味わいを楽しむことができる。アルファベットは、それぞれの頭文字、鈴鹿市の伝統的工芸品の伊勢型紙によるボトルデザインもスタイリッシュ。「IMPRESSION—M」はミラノ酒チャレンジ2019で金賞受賞している。

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『鈴鹿川』は、まさに仕込み水にも使われている大切な川の名前を冠した地元限定流通ブランド。「地元に誇れる、地元の人にも愛される地酒」という思いをもって、2004年に立ち上げられた。ラベルに使用しているのは、日本人の着物文化を支えてきた鈴鹿の伝統産業である伊勢型紙の文様。『鈴鹿川』は、古来より土地に根付くものづくりへの情熱と誇りを地元の人たちと共有したいという思いが込められている。『作』と大きく違うのは、ラベルに純米吟醸、純米大吟醸など特定名称を入れていること。飲む前からある程度味が想像できるという配慮だ。『作』の場合はややチャレンジングな造りを追求する傾向にあるが、『鈴鹿川』は買う人、飲む人、相性のいい料理や飲むシチュエーションなどのレンジを広げている銘柄なのだ。また、2013年の伊勢神宮の式年遷宮の記念として目を引くラベル、パッケージでデビューした純米吟醸『イセノハナ』。2021年夏、純米大吟醸にバージョンアップして『イセノナミ』に。伊勢神宮の古の歴史に思いを馳せて欲しいというストーリーものせて、パッケージもリニューアル。手土産や晴れの日に飲んで欲しいというシチュエーションの提案性のある商品だ。

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1. 作インプレッション N

バナナ、洋梨、メロンなど甘いフルーツの香り、口あたり滑らかでしっかりとした味わい。凝縮された旨みと爽やかな酸味がフルーティーな甘い味わいによって和らげられている。後味には軽いシュワシュワ感が。熟成したチーズの濃厚な旨みとの相性が抜群なのでチーズフォンデュと。クリーミーなパスタ、ポテトグラタンなども◎。

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2. 作インプレッション H

ライチ、メロンなどの甘くフレッシュなフルーツの香りの中にほのかなミネラル感を感じる。濃厚でしっかりとした凝縮感のある味わいが酸味によってさらに高められる。口の中に残るぴちぴちとした感触も特徴。フルーティーな香り、旨み、鮮やかな酸味は、ベトナム春巻きやタイの野菜料理など東南アジアの様々な料理と相性が良い。

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3. 作インプレッション G

バナナ、洋梨のような甘いフルーツと、ハーブのような爽やかな香りと味わい。中盤からはコクと深い旨みが広がり、最後はキレが良く、ミネラル感が後味に残る。スパイシーな料理、豚肉との相性が抜群なので、韓国焼肉、タイ料理、ラフテーなど沖縄料理や酢豚をはじめ豚肉を使った中華料理と合わせたい。

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4. 作インプレッション M

青リンゴ、メロン、ヨーグルトの軽やかで綺麗な香り。甘い味わいに、まろやかな旨みを生き生きとした酸味とピチピチと弾ける炭酸が引き立てている。食前酒としても楽しめる一本。ホタテ、トウモロコシなど甘みのある食材の天ぷら、軽い味付けの揚げ物や、白身魚のムニエル、グリル野菜などとの相性◎。

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5. イセノナミ 純米大吟醸

青リンゴ、洋梨など甘いフルーツやヨーグルト、蒸した米のような軽やかで爽やかな香り。滑らかな口当たりでしっかりとした凝縮感のある味わいと深い旨みがある。柑橘系の酸味と苦味が心地よく、切れ味も良いので、焼き鳥からロースト、スモークなど鶏料理と相性抜群。ゴーダやコンテなどセミハードチーズにも。

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6. 鈴鹿川 純米大吟醸 滴取り 鹿

洋梨やミカンの華やかで甘い香りが口の中で穏やかな波のように滑らかに流れていく。上品なコク、旨味と酸味のバランスも絶妙。柑橘系の酸味、苦味が心地よく切れ味はしっかりしている。マグロの刺身、銀鱈の西京焼き、ホタテやロブスターのバター焼きなど濃厚な魚介類との相性抜群。

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7. 鈴鹿川 大吟醸 滴取り 大鹿

トロピカルフルーツの中に甘い米の香り、豊かで複雑な味わいで満たされる贅沢な口あたりが特徴。五味の絶妙なバランス、上品な酸味など優雅な味わいが長い余韻となって残る。豊かな風味ながらも精細なキレがあり、様々な鶏料理やクリーミーなパスタ、リゾットと相性が良い。

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8. 鈴鹿川 純米大吟醸 磨き四割り

メロン、パパイヤなどエレガントなフルーツの香りとサワークリームを思わせる乳酸の香り。お米から引き出された甘み、旨みが口の中で凝縮。あと味には心地よいミネラル感、ハーブのような苦味が残り、全体としてバランスの良い味わいに。バターやクリーム、フレッシュチーズを使った料理との相性が抜群。

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9. 鈴鹿川 大吟醸

フルーティーでフローラルな香り。柑橘のような爽やかな酸味とミネラル感が絶妙なバランスを醸し、辛口の中に透明感を感じる。鶏肉、仔牛、豚肉など様々な肉料理に合わせることができる万能タイプだが、辛い料理との組み合わせは避けた方が良い。

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10. 鈴鹿川 純米大吟醸 全量山田錦

パイナップル、ライチなどトロピカルフルーツの香りに柚子のような香りが加わり華やかな印象。バランスのとれた味わいは豊かで緻密、次第に深みや複雑さも出てくる。キレが良く、あと味には柚子胡椒的なスパイシーな苦味が残る。マグロの大トロなど脂ののった魚の握りや刺身、そしてステーキなどのシンプルな肉料理に。

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11. 鈴鹿川 純米大吟醸

甘美なトロピカルフルーツの中にヨーグルトのほのかな香り。味の重なりが美しい秀逸なバランスでエレガントな深みと複雑さが口の中でふくらむ。余韻も長く味わいの印象をしっかり残す。キャビアや甲殻類、魚のバターソテーなどの魚介類や、かぼちゃ、アスパラガスなど甘みのある野菜の料理などに合わせたい。

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12. 鈴鹿川 純米吟醸

青リンゴやライムを思わせるフローラルで爽やかな香り。甘み、酸味、旨みのバランスが良く軽やかな味わいだが中盤からは深みが増す。あと味はキリッと爽やかで飲みやすく、どんなシチュエーションでも楽しめる気軽さも魅力。良く冷やして天ぷら、フライなど軽い味付けの揚げ物、魚介のパスタ、焼き魚、鶏肉料理などと。

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13. 鈴鹿川 吟醸

青りんご、洋梨など甘く爽やかな香り、味は軽やかですっきりクリア。バランスが取れた味わいが口の中で広がり、そのあと米から引き出されたコクが出てくる。アボカドサラダやグリル野菜、天ぷらや魚のフリットなど軽い味付けの揚げ物料理に最適。

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14. 鈴鹿川 純米

熟した果物の芳醇な香りと味わいが口の中でふくらみ、中盤から深みを増していく。ジューシーな酸味と後味に残る繊細な苦味のバランスが取れているので、冷酒ならどんな料理とも合う。ぬる燗でも楽しむことができ、落ち着いた香りとまろやかな味わいで寿司、魚の塩焼き、焼き鳥(塩)などと。麻婆豆腐などの辛い料理にも◎。

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まとめ1

限りなく「生酒」に近いフレッシュさを追い求めて挑戦し続けた努力の結実、インプレッションシリーズは、微発泡のピチピチ感で酸味の印象が高められ、豊かな風味を持ちながらも切れ味が抜群。食前、食中と通して飲める。また、イタリアン、フレンチ、中華料理、タイやベトナムなど東南アジアの料理にも合わせたくなる。日本酒でありながらも、日本料理だけでなく現代の食事に寄り添う味わいに、世界に目を向けている蔵元の熱い想いも感じられた。 地元流通限定の『イセノナミ』『鈴鹿川』は、飲み心地が滑らかで口の中に甘みが広がるものの、ふわっと軽やかに消えるので甘過ぎず、凝縮感、深みのある味わいがじんわり開いてくるのが印象的。そして綺麗な酸と心地良い苦味があと味を爽やかにしてくれるのは清水清三郎商店ならでは。軽過ぎず、重過ぎずのバランスも見事で、品良くまとめられている。味わい豊かでエレガント、それでいて親しみやすいところなど全体的には『作』と似ているが、国籍、老若男女、通、飲み慣れない人などより幅広く飲み手を魅了する。多くの人に愛される普遍的なものづくりの姿勢を表しているに違いない。

テイスティングコメント:ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) 文章:藤田実子 写真:清水清三郎商店 【ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) プロフィール】 株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 海外PR・企画、輸出事業部長 SEC Certified Advanced Sake Professional WSET® Sake Level 3 Educator ニュージーランド出身の日本酒専門家。 2016年からIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門の審査員を務め、企業や5つ星ホテル、世界有数のレストラン向けの日本酒コンサルタント、日本酒教育、世界市場向けのトレーサビリティーのあるマイナス5℃の日本酒輸出システムの開発などに携わり活動中。
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