連載第8回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

常に“究極の食中酒”を追求し、常識に囚われない試みがファンを魅了。上品な味わいの『伯楽星・あたごのまつ』14種を飲み比べてみた

更新日Jan 4, 2022

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明治6年(1873年)に宮城県大崎市に創業した新澤醸造店。創業当時から続く銘柄『愛宕の松』は長く地元で親しまれ、「荒城の月」の詩人・土井晩翠も愛飲したという。 2000年に5代目・新澤巖夫氏が杜氏に就任すると、どんな料理も引き立てる酒造りを目指し、翌年には新銘柄『伯楽星』を発表、「食中酒」というジャンルを確立した。

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2011年3月の東日本大震災で蔵は全壊判定を受けるほどに。しかし、日本各地の酒蔵の応援を受け4月には被災した旧蔵でいち早く醸造を再開。だが、被災した蔵の再建には多額の費用がかかり建て替え中には製造ができなくなるため移転を決断。約140年間に渡り酒造りをしてきた大崎市三本木の旧蔵から、柴田郡川崎町の新工場へ移転し設備を充実させた。 搾った酒をマイナス5℃で管理、熟成のタイミングを見極め少し若い状態で出荷するなど徹底した品質管理と出荷管理が蔵の特長でもあり、国内外の有名レストランからの厚い支持も得る。

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「究極の食中酒」をコンセプトに新しい挑戦を続ける新澤醸造店。 2018年には全国最年少女性杜氏(当時22歳)が仕込んだ酒が国際的なワイン品評会「ブリュッセル国際コンクール(CMB)」で受賞するなど、若い杜氏も活躍する。 2019年には米を限界まで磨いた驚愕の「精米歩合1%未満(0.85%)」で醸造した「零響」を発表するなど、高みを目指し挑戦を続ける新澤醸造店の「究極の食中酒」14種を飲み比べてみた。

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1. あたごのまつ 鮮烈辛口

香りはとても穏やか。冷やして飲むと果実のみずみずしさを感じ、温度が上がるにつれて米の旨みを楽しめ、燗酒にすると切れ味爽快。色んな温度帯で楽しめる一本。丁寧に醸された本醸造の澄んだ味わいは、懐が深く料理を選ばない。白身魚の刺身や焼き魚、だし巻き玉子や酒蒸しなど海鮮居酒屋や蕎麦屋の定番のつまみとの相性は抜群。

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2. あたごのまつ 純米吟醸 ささら

純米吟醸の綺麗な甘味の中にフルーツのフレッシュな香りが感じられ、おりがらみの感じが爽やかな味わいに深みを加えている。ハーブを効かせた魚介のサラダや春野菜のフリット、フレッシュチーズなど軽やかな洋風の前菜に合わせると魅力が増す。冷やして飲むのが◎

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3. あたごのまつ 特別純米

甘いフルーツと米の香りが適度に混ざり合い、非常に心地よい。しっかりとした旨味と綺麗な酸味のバランスがよく、食中酒にふさわしい。とくにしっかりと輪郭のある魚介系の料理、鱈の寄せ鍋や、白子ポン酢、天ぷらなどに合わせたい。

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4. 零響 -Absolute 0- 2021

0.85%という究極までお米を磨いて作られた純米大吟醸は、お酒そのものに集中して楽しみたい一本。特上のフルーツの甘い香りがほのかに感じられ、和三盆のような上品できめ細やかな甘みに淡い苦味が加わった繊細な味わいは、唯一無二。合わせるなら出汁を使った研ぎ澄まされた精進料理などに。

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5. NIIZAWA 純米大吟醸 2020

ベリー系の甘い香りが特徴。豊潤な甘みと、酸味、苦味のバランスがよく、余韻も綺麗に長く続く。完成度が高く、華やかな料理にも負けないボリューム感がある。フォワグラや鴨のローストなどのフランス料理との相性◎。ワイン好きにもお薦めしたい。

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6. NIIZAWA KIZASHI 純米大吟醸 2020

熟したフルーツの香りが爽やかに感じられる。ふくよかな米の旨みの中に感じられる若々しい苦味で後味すっきり。温度が上がるにつれ白ブドウのようなニュアンスも感じられ、上質な食事と共にワイングラスで楽しみたい1本。ズワイガニや伊勢海老、ウニ、アワビなど旨みたっぷりの海鮮料理がおすすめ。

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7. 超特選 純米大吟醸 残響

爽やかなフルーツの香りが清涼感を与え、口に含むと蜜のような香りがふわっと鼻腔をくすぐる。ミネラル感がありピュアな印象の純米大吟醸酒は余韻が長く美しい。すっきりと透き通る味わいは、白身系の寿司やふぐ料理の旨味に合わせると余韻が続く。

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8. 伯楽星 純米大吟醸 東条秋津産山田錦

ミルクキャンディーのような柔らかな香りの後、フルーツの爽やかさを感じ、口に含むとミルキーな味わいが口の中に広がり、厚みがある。料理はオールジャンルOKだが、温かい料理の方が厚みのある旨みにふさわしく、食中酒としての「伯楽星」の実力を堪能したい。

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9. 伯楽星 純米大吟醸 社下久米産山田錦

ラムネや柑橘系の清涼感ある香り。口に含んだ瞬間からきれいな酸を感じ、徐々に米の旨味が増してくる。甘味と苦味は控えめできめ細やか。イタリアンや上海料理、天ぷらなど油分が濃い料理を合わせるとはっきりとした酸味が生きてくる。食中酒の醍醐味を味わえる1本。

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10. 伯楽星 純米大吟醸

ほのかな甘い香りが鼻の奥で感じられる。口中に広がる旨味と甘味、酸味、苦味の全てのバランスが整っており、ここまで食中酒にふさわしい純米大吟醸はなかなか他には見当たらない。淡い味付けから濃いものまで幅広く対応できる食中酒。お刺身全般、鶏肉や豚肉の塩焼きなどに合わせると完璧。柑橘や塩味とも相性がよい。

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11. 伯楽星 純米吟醸

香りはとても穏やか。味の厚みがありながらキレ味が良いため、チーズや海老の旨味や、ドライフルーツの凝縮した甘味、アボカドなどの油脂分を上手に引き立ててくれる。冷した状態から20℃くらいまで幅広い温度帯で楽しめ、ホームパーティーなどカジュアルな場でも十分に楽しめる。

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12. 伯楽星 純米吟醸 雄町

柚子など、日本の柑橘系フルーツの香り。舌触りがとてもなめらかで、繊細な和の味わいを思わせる。お鮨や酢の物など和風のまろやかな酸味や、椀物などの繊細な旨みと合わせたい。

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13. 伯楽星 特別純米

水飴やマシュマロ、ポン菓子のようなふわっとした甘いお菓子の香りが特徴。口に含むとまず優しい酸を感じるが次第に旨味に変わっていくのが心地よい。シンプルな米の甘味が感じられるため、料理に合わせて楽しみたい。平目の昆布締め、焼き牡蠣、甘鯛の塩焼きなどのシンプルな味付けの魚介や、塩味を感じる料理に合わせるとお互いを引き立てる。

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14. 飛龍 純米大吟醸

食用米を用いた純米大吟醸にはしっかりとしたコクととろみがあり、さらに甘酸っぱい味わいも加わり魅力的。ベリー系の香り中にもふわっと甘い香りも感じられる。穴子やあん肝、香箱蟹、オイスターソースなどコクのある料理と相性がよい。

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まとめ1

「究極の食中酒」を目指す蔵として、守備範囲の広さに目を見張る。『あたごのまつ』は、温度帯を選ばず飲めるため居酒屋や晩酌など汎用性が高い。『伯楽星』は、鮨や天ぷら、懐石料理など高級和食から、フレンチやイタリアンなどの洋食までカバーする。 食事との相性を追求し、香りは控えめですっきり爽快でキレの良さが光る。冷酒で感じられる爽やかな酸が秀逸。飲み続けても、口の中がベタつかず飲み続けられるお酒は貴重。本当に「究極の食中酒」をつくっていると思う。 一転、発表当時、精米歩合0%とセンセーショナルな登場をした『零響』は、食中酒の領域をはるかに超えていて、脇役にしておくには忍びない。洗練を極めた究極の味わいをまずは単体で楽しみたい。

テイスティングコメント:多田正樹 文章:畑礼子 【多田正樹プロフィール】 1969年 島根県松江市生まれ 1990年 都内フランス料理店を中心に接客を担当 2000年 新宿京王プラザホテル ・日本酒バー【天乃川】、和食、懐石料理店舗にて日本酒選定・サービス ・ホテル独自の日本酒開発 2011年 神楽坂【ふしきの】酒番 2014年 神楽坂【月よみ庵】店長兼酒番 2017年  神楽坂【蒼穹】店主 現在 【ブレス合同会社】 『和酒を扱う料理店のご相談係』 『日本酒テイスター』 『佳酒と古陶磁 出張人』として料理人さん、古美術商さんと共に活動中  Instagram:@tada_masaki
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