連載第9回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

"時代に合う味わい"を追求する森島酒造の『富士大観』『森嶋』10本を飲み比べてみた

更新日Jan 21, 2022

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茨城県日立市の森島酒造は明治2年創業、150年以上の歴史を持つ。海まで歩いて70歩という茨城でいちばん海に近い酒蔵だ。海べりではあるが地下には阿武隈山系の良質な伏流水が流れ、敷地内の井戸で汲み上げた硬水を仕込み水として使っている。

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1953年終戦後、森島酒造の代表銘柄『富士大観』の元となる『大観』が誕生。『大観』は、戦火で焼失した蔵を再興した4代目が日本画の巨匠・横山大観と親交があったことから生まれた銘柄。全国新酒鑑評会で金賞を重ね、地元では長く親しまれている。2015年より新たなブランド構想を始め、2019年創業150周年を機に銘柄を『大観』から『富士大観』に一新した。

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同じく2019年に発表した新銘柄『森嶋』は、現在蔵元杜氏として腕を揮う六代目・森嶋正一郎氏が2011年の東日本大震災で被害を受けたのをきっかけに立ち上げた新ブランド。今では人気ブランドとなっている『森嶋』だが、蔵元杜氏の森嶋正一郎氏が理想としていた『味』が完成するまでの道のりは長かった。思い描く酒を醸すことができずに悩んでいた時に出会ったのが日本酒業界を牽引する勝木慶一郎先生だ。森嶋氏の酒造りに対する真っ直ぐな姿勢と、懸命な努力が実を結び、勝木慶一郎先生より指導を受けることに。そして誕生したのが『森嶋』だ。 『富士大観』の華やかな香りとキレのある味わいに対し、『森嶋』は酸味を重視。これまでの製法を見直し設備を一新、酒米は「雄町」「ひたち錦」「山田錦」「美山錦」の4種を選択し精米歩合を5%刻みに調整、伝統的な麹菌と酵母を選択し、食事に寄り添う味を追求する。 長年受け継がれたどっしり辛口の揺るぎない存在感の『富士大観』と、食中酒としての新たな境地を開拓する『森嶋』の10本を飲み比べてみた。

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1. 富士大観 秘蔵酒 限定大吟醸

熟した甘い果実の芳醇な香りが広がる。酸味は少なくはちみつのような甘味が魅力的。長期熟成による力強く濃厚な味わいは圧巻。フォワグラソテーやアップルパイなど香ばしいスイーツ、塩味のはっきりしたチーズ、酢豚など輪郭のはっきりした料理と合わせて、余韻を楽しみたい。

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2. 富士大観 金賞受賞酒 限定大吟醸

淡く爽やかな香りは、食事にも合わせやすい。旨味もしっかりとあり、ウニのクリームパスタやサーモンのムース、生ハム、シェーブルチーズなど、油脂分や塩分が多い料理とも好相性。細身なワイングラスではすっきり、平盃型では酸味の輪郭がはっきりと、酒器を変えて異なる味わいを楽しんでみては。

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3. 富士大観 純米大吟醸

まったりと甘く華やかな香りが広がり、透明感とミネラル感が心地良く、シャープな酸と僅かな苦みが後味をすっきりさせている。上品でシンプルな汲上げ豆腐や鶏の水炊きに合わせて。和牛もも肉のたたきに本ワサビを合わせても◎。

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4. 富士大観 大吟醸

華やかな吟醸酒が好きな方におすすめの一本。ママレードのような、甘くまろやかな柑橘系のジャムの香りに、滑らかな口当たりと繊細な甘味と旨味が一体となった上質な味わいは料理を選ばない。カプレーゼや春野菜のフリット、イチジクと春菊の白和えなど果実や青い香りと合わせると甘みが引き立つ。

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5. 富士大観 青ラベル純米吟醸

お米の芳醇な香りが日本酒らしい印象を持たせてくれる。酸味が少なくサラリとした口当たりなので、様々な味わいのバランスが取れていて親しみやすい。だし巻き卵や、野菜の煮浸し、魚の煮付けなど出汁の効いた蕎麦屋やおでん屋のつまみを合わせて。常温でも楽しめる一本。

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6. 富士大観 青ラベル純米酒

穀物や麹の落ち着いた風味の純米酒。ストレートな米の味わいと程よい酸味は、〆鯖、ぬか漬けなどのクセの強いものにも合わせられる懐の深さ。焼鳥や炉端焼き、家庭料理など幅広くカジュアルなシーンで気軽に飲みたい。常温~ぬる燗もおすすめ。

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7. 富士大観 本醸造 紫ラベル

非常に穏やかな香りの中に僅かに乳製品のような香りが感じれらる。ドライでシンプルな味わいなので常温で飲んでも◎。辛口好きにおすすめしたい一本。穴子白焼きや牡蠣フライ、湯豆腐など居酒屋の定番のつまみには万能で、晩酌にも使いやすい。

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8. 森嶋 雄町 純米大吟醸 瓶燗火入

清々しく爽やかな、森林をイメージさせる香り。きめ細やかで甘みは抑え目、アルコール感も控え目なので軽快に楽しめる。輪郭の美しい酸と最後に感じる綺麗な苦味は根菜と相性がよい。蓮根や牛蒡のきんぴら、焼き葱、三つ葉とささ身のサラダなどに。

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9. 森嶋 ひたち錦 辛口 純米吟醸 瓶燗火入

透明感高く、穏やかな香り。口当たりはなめらかで旨味の質が良い。適度に酸がありキレ味が良く、飲み飽きる事が無い。脂の乗った魚介はもちろん、肉類もOK。高級店から家呑みまでありとあらゆるシーンで楽しめる。串揚げ専門店では串が止まらなくなりそう!

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10. 森嶋 美山錦 純米酒 瓶燗火入

香りは穏やかだが上品。整った甘みと旨みに、白ワインにも似た酸と苦みが加わった絶妙なバランスの仕上り。年齢を問わず幅広い層に好まれる現代的な味わい。天ぷらや寿司などの和食から洋食バルや日本酒バーまでオールジャンルに対応可能。

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まとめ1

酒米を選び抜き、その個性を活かす工夫からか、全体的に華やかな香りと濃厚な米の旨味がある。硬度の高い伏流水を仕込み水としていることからミネラル分も感じられ、綺麗な余韻が楽しめる。 特に『富士大観』は、「濃醇辛口」と呼ぶにふさわしく、油分の多い中華料理や、クリーム系の料理、塩気の濃いものにも対応できるボリューム感と後味の良さが特長。 一方、「時代に合う味わい」を求めた新銘柄『森嶋』は、食事を邪魔しない穏やかな香りと、透明感、フレッシュな味わいが実現されている。白ワインにも似た程良い酸味は、食欲を刺激し食中酒にふさわしい。150年の伝統を守りながら、新たな挑戦を続ける酒蔵のさらなる進化が楽しみである。

テイスティングコメント:多田正樹 文章:畑礼子 【多田正樹プロフィール】 1969年 島根県松江市生まれ 1990年 都内フランス料理店を中心に接客を担当 2000年 新宿京王プラザホテル ・日本酒バー【天乃川】、和食、懐石料理店舗にて日本酒選定・サービス ・ホテル独自の日本酒開発 2011年 神楽坂【ふしきの】酒番 2014年 神楽坂【月よみ庵】店長兼酒番 2017年  神楽坂【蒼穹】店主 現在 【ブレス合同会社】 『和酒を扱う料理店のご相談係』 『日本酒テイスター』 『佳酒と古陶磁 出張人』として料理人さん、古美術商さんと共に活動中  Instagram:@tada_masaki
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