連載第17回 有名料理人が語る料理と日本酒

全国の食通が渇望するイタリアンの頂 『ペレグリーノ』高橋氏が選ぶ日本酒5選

更新日Jan 28, 2022

この記事をシェアする

ShareTweet
特集画像1

飲食店のプロが料理と日本酒の合わせ方のコツを提案する連載17回目は、圧倒的な食体験が待つイタリアンとして、全国にその名を轟かす恵比寿『ペレグリーノ』が登場。 東京にはいま、6000軒近いイタリアンがあると言われているが『ペレグリーノ』は、独自性を貫く店のなかでも別格の存在。営業は週に3日の昼夜のみ。7坪ほどの店内に客席数は5席とあって「予約が取れるのは奇跡に近い」と言われるが、食好きが是が非でも訪れたいと切望する理由は、店主の高橋隼人さんの比類なき仕事ぶりにある。

特集画像2

店が休みの日もインプットとアウトプットを欠かさず、日々精進の精神で料理に向き合う高橋さんは、卓越した技術と発想力を持った料理人であると同時にその道を追求する“職人”でもある。「自分の目で見て、手で生み出すことに労を決して惜しまない」という思いは年々、深化しており、横並びの客席からすべての視線が注がれる作業台にもその覚悟が見てとれる。

特集画像3

メニューはお任せコースの2部制になっており、1部は季節の食材を使った料理が6品前後登場するコース。2部は手動生ハムスライサーを使って生ハムの色々な味わいを楽しめるコースを。 四季の食材の掛け合わせを熟慮した料理と『ペレグリーノ』を語るにはずせない切りたての生ハムをいかに楽しんでもらうかを考えたときに、交響曲のように料理を“章立て”し、供するというまったく新しい手法を思いついたという。 「ハムは前菜というのが定説ですが、自分や世間で当たり前になっていることを、果たして本当にそうなのかなと見つめ直すところに僕の仕事の原点があります」と高橋さんは話す。

特集画像4

料理と合わせるワインは、必要以上に素材に手を加えずに持ち味を最大限に引き出すという高橋さんの料理哲学にも通じる「人為的な介入ができるだけ少ないもの」。 「イタリア自然派ワインの重鎮として知られるヨスコ・グラヴネルのように、自然を尊重したワインづくりにとても共感し、味わいとしては、土着感があり、時間がたつにつれて香りや風味が変化を楽しめるワインが好きです。日本酒もワインと同じく、仙禽オーガニックナチュールのような土地の風土を生かした酒造りなど、コンセプトも含めて共感できるものに惹かれます。」 独自の感性で日本酒と料理の組み合わせを提案してくれた高橋さん。イタリアンやフレンチといった料理に日本酒を合わせるヒントが満載のペアリングに注目!

サンダニエーレ産プロシュート × 仙禽 オーガニック ナチュール

「第2部の手動生ハムスライサーを使った生ハムのコースの最初にお出しするサンダニエーレ産のプロシュートは極薄にスライスし、手の甲にのせた状態で召し上がっていただきます。やみくもに薄くしているわけではなく、空気とともに吸い込むように召し上がっていただくことで旨味、甘味、塩味がより膨らむようにスライスをしています。「仙禽 オーガニック ナチュール」は、土地の風土を生かした酒づくりという点や自然の力や個性にそれを委ねるという考え方に僕が好きなナチュラルなつくりのワインとの共通点を感じます。そのままで飲むとフルーティーでみずみずしい印象ですが、冷やすことで味がぐっと引き締まります。プロシュートは切りたての状態と、酢飯を合わせた“特別な組み合わせ”も召し上がっていただくので、米の旨味やしっかりした酸も持ち合わせているお酒がとてもよく合うと思います」

株式会社せんきん|栃木県
この日本酒詳細を見る

ボローニャ特産モルタデッラ × 花巴 山廃純米 無濾過生原酒

「モルタデッラは香りと余韻を楽しんでいただくために切りたての状態と、古代小麦でつくるチャバタにのせての2種でご提供をしています。より自然に栽培された小麦の粉でつくるチャバタは噛むほどに自然な甘みが口のなかに広がり、同時にモルタデッラの淡い甘味や塩味がふんわりと重なる。ボリューム感があり、酸味がしっかりとした「花巴 山廃純米 無濾過生原酒」は個人的にもとても好みのお酒です。飲んだ瞬間のぐっと引きこまれる味の強さと奥にみりんのようなニュアンスを感じるのも好きですね。素材の味を自由に連れて行ってくれるのでモルタデッラのしなやかな旨味がどこまでも広がっていく感じがします。僕はワイン「ヨスコ・グラヴナーのリボッラ」がとても好きなんですが、土着感と時間がたつにつれて、味に変化が生まれるという意味ではどこか似ている気がします。胃の腑にガツンと沁みるようなインパクトがあり、その後にしみじみとした旨さが追いかけてくる。包容力のあるお酒なので、塩味やこしょうなどのスパイスが立った料理との相性もいいと思います」

美吉野醸造株式会社|奈良県
この日本酒詳細を見る

うに 自家製ライ麦パン × 小笹屋竹鶴 大和雄町 純米原酒

「ピエモンテの発酵バターを使ったライ麦パンにうにをたっぷりのせた一品は第1部の季節の食材を使ったコースのなかでお楽しみいただきます。うにはワインでも日本酒でも、合わせるお酒によっては臭みを感じてしまうデリケートな食材ですが、「小笹屋竹鶴 大和雄町 純米原酒」は生うにのテクスチャーをしなやかに受け止めながら、最後にすっとやさしく切ってくれる度量の深さがあります。静かなる凶暴性というか、いかようにもなるポテンシャルがあり、常温はもちろんお燗にしてもその完成されたバランスがくずれることはない。モルタデッラに合わせた花巴がどこまでも味の余韻を伸ばしてくれるお酒なのに対して、こちらはいい塩梅で味を切ってくれるという印象です」

竹鶴酒造株式会社|広島県
この日本酒詳細を見る

海老、黒トリュフ、空豆 × 東洋美人 純米吟醸 大辛口

「咀嚼するごとにやさしい旨味が広がるように繊細な火入れをした海老と空豆のほっくり感、黒トリュフの土っぽさを合わせたひと皿。食材の組み合わせのバランス感を楽しんでいただきたいので、いい意味で旨みが前面にでしゃばりすぎないお酒を合わせたいです。そこにいくと、「東洋美人 純米吟醸 大辛口」の優等生ぶりには驚くばかりです。まったく嫌味がなく、誰とでも仲良くできる愛され上手という感じかな(笑)。気がつくと誰かの懐にすっと入りこんでいるという、このお酒にしかない圧倒的なセンスがあります。とてもきれいだけど、凛とした存在感があり、魚はもちろん果物を使ったイタリアンの前菜や冷製のパスタにも合うと思います」

株式会社澄川酒造場|山口県
この日本酒詳細を見る

いちじくとパン × 田中六五

「田中六五はするする飲める食中酒として、もともと好きなお酒です。田んぼのなかにある酒蔵で醸されたということからつけられた名前だそうですが、その名の通りのすこやかさ。飲み口がとても爽やかなので、最初は少しひかえめかなと思うのですが、お米の旨みと酸のバランス感、そこはかとなく長い余韻があるのも魅力。いちじくの中庸的な甘さとンドゥイヤ(豚肉のソーセージ)の塩味、ぴりっとした唐辛子の辛みを楽しみながらこのお酒をちびちび飲むと、つくづくバランスのいいお酒だと思います。家飲みをするならンドゥイヤと国産のマスカルポーネを買ってきて、少しずつ混ぜながらこの日本酒に合わせると至福のおつまみになるので、ぜひ試してみてください」

有限会社白糸酒造|福岡県
この日本酒詳細を見る
まとめ1

「今回、日本酒に料理を合わせてみたことで面白い発見があったので、今度はパスタで試してみたいと思いました。たとえば、僕が修業をした北イタリアのブーロ•エ•パルミジャーノ。バターとチーズと塩胡椒だけでつくるとてもシンプルなパスタなんですが、田中六五のようなすっきりとしたお酒にとてもよく合いそうです。イタリアンはオリーブオイルを多用する料理というイメージを持つ方が多いと思うのですが、オリーブオイルの油分は主張がはっきりとしているので、お米の旨みが強い日本酒とは合わせにくいという気がしていたんです。ただ、今回いろいろな組み合わせを模索するなかで日本酒のポテンシャルの高さをすごく感じたので、これからも続けて深掘りをしていきたいです」

レストラン写真

PELLEGRINO(ペレグリーノ)

東京都渋谷区恵比寿2-3-403-6277-4697『昼の回』11:45開場 12:00 お料理一斉スタート 『夜の回』17:45開場 18:00 お料理一斉スタート 定休日:金、土、日、月http://pellegrino.jp/
取材・文:小寺慶子 写真:小寺慶子、ペレグリーノ
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
TOP