連載第10回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

徹底した米へのこだわり。圧倒的な旨みで飲み手を魅了する悦凱陣12種類を飲み比べてみた

更新日Mar 1, 2022

この記事をシェアする

ShareTweet
特集画像1

香川県の名所「こんぴらさん」として知られる「金刀比羅宮」にほど近い町中に位置する丸尾本店。 長州藩の倒幕派の中心となった人物、高杉晋作が一時潜伏したことのある蔵でも知られている丸尾本店は明治18年(1885年)に「新吉田屋」という酒屋を営んでいた長谷川佐太郎さんから酒造りの権利を譲り受け創業。現在の丸尾本店には、当時高杉晋作が探索の手を逃れて潜伏していたと言われている"からくり部屋"が残っていることで有名だ。

特集画像2

そんな歴史深い丸尾本店の代表銘柄は、強い酸とキレ、個性的なしっかりとした味わいが特徴の「悦凱陣」。全てのお酒を昔ながらの和釜と木製の甑(こしき)を使用し、1本1本丁寧に時間をかけ造られているから生産量も少なく"入手困難"と言われることも。 米の違いを楽しんでほしいからと、一つの仕込みに対して、使用される米は一種類のみ。麹~掛米は同じ種類、同じ産地の米のみという徹底ぶり。そのこだわりが、悦凱陣の魅力の一つだと言える。

特集画像3

丸尾本店が醸すお酒の7割強は生酒といわれている。火入れをしていない生酒は火入れ酒より劣化が進みやすく、冷蔵保管が望ましいが、悦凱陣の生酒は常温熟成させても美味しくなるというから不思議だ。悦凱陣のように酸度、日本酒度が高いお酒は一般的に辛口と言われているが、悦凱陣は米本来の甘味がしっかり感じられるので、数値ほどの辛さを感じないのが特徴。 お燗でひらく魅惑の旨み、こだわり抜かれた米から引き出される味わいで飲み手を魅了する「悦凱陣」12種類を飲み比べてみた。

酒蔵情報を見る

1. 悦凱陣 純米大吟醸 燕石 生酒

しっかりとした旨味と米の芳醇な香り。芳醇な旨味にジューシーな酸味がバランスをとり、長い余韻を柑橘の皮ような苦味が引き締める。ビーフシチューや酢豚、ハードタイプチーズなどの旨味の強い食事との相性が良い。ワイングラスで常温、もしくは50~60℃のお燗で飲むのが◎。燗にすることで、果実の甘い香りと米本来の旨味が感じられる。

この日本酒詳細を見る

2. 悦凱陣 純米吟醸 興 うすにごり生仕込み

濃厚な果実の甘い香りと穏やかな旨みを感じる。特徴的な力強い味わいはそのままに、柔らかく穏やかな味わいもある。しっかりとした米の甘みがあることで、旨みとのバランスを整える。キレの良さと甘みは、ローストチキンなどの肉料理からサムギョプサルやサムゲタン、キムチなどの韓国料理特有の塩味や辛味の強い料理も引き立てる。

この日本酒詳細を見る

3. 悦凱陣 純米大吟醸

甘み、旨み、酸味が全てはっきりと感じられるバランスの良いタイプ。口の中に含むと、濃縮された香りが広がる。大きめの赤ワイングラスやぐい呑みでたっぷりと口に含むとバランスをより感じられる。バター風味のマッシュポテトやチーズなどの旨味と油分を含んだ食事との相性が良い。

この日本酒詳細を見る

4. 悦凱陣 純米吟醸 黒澤 亀の尾 無ろ過生

口に含むと米の甘みを感じ、旨みと深いコクが広がる。ジューシーな酸味と力強い凝縮した旨みが特徴的。山椒のようなスパイシーさが余韻を引き立てる。4年熟成させているので、しっかりと空気と合わせることで香りと味わいが広がる。牛肉のしぐれ煮や肉じゃが、ビーフシチューなどコクのある料理との相性が非常に良い。60℃まで温めると酸がシャープになり軽快な味わいになる。

この日本酒詳細を見る

5. 悦凱陣 純米吟醸 赤磐雄町 無ろ過生

濃厚な甘みと強い酸味が特徴的。ハーブを思わせる苦味が酒の輪郭を作り、全体をまとめ上げる。アルコール度数が18~19度と高めだが、米の自然な甘みがあることで柔らかい印象になる。魚介とトマトの煮込みやラムのタジン鍋などの地中海料理を引き立てるハーブのような役割になる。

この日本酒詳細を見る

6. 悦凱陣 山廃 純米酒 遠野 亀の尾 無ろ過生

米やヘーゼルナッツを感じさせる芳醇な香り。熟成による濃厚で凝縮された甘みとしっかりとした口当たり。苦味とジューシーな酸味があることで重厚な甘みを軽やかにする。甘み、苦味、酸味の要素をしっかり感じられる1本。焼鳥や鶏レバーのパテ、フォアグラ、北京ダックなどの旨味の強い鶏料理との相性が◎ 。燗にすることで重厚な風味を存分に味わうことができる。

この日本酒詳細を見る

7. 悦凱陣 純米吟醸 讃州山田錦 無ろ過生

柔らかい甘みと豊かな米の香ばしい香りが特徴的な1本。ドライフルーツのような凝縮した甘みとクリーミーな酸味、旨みのバランスが良いので力強くも飲み口は柔らかい。ぶりのカマ焼き、さばの炙り焼きなどの脂の乗った魚料理やウニのクリームパスタなど濃厚な味わいの料理と合わせることで柔らかい甘みを引き立たせてくれる。

この日本酒詳細を見る

8. 悦凱陣 山廃 純米酒 瀬尾米 無ろ過生

穀物のような甘みと豊かな香り。甘酸っぱくも、渋みが加わることで引き締まる。濃厚な旨みとスパイシーな後味はイベリコ豚の生ハムやジビエ肉などの強い旨みをもつ肉料理や子羊のタジンやクスクスなどのモロッコ料理との相性が良い。60℃まで温めるとアーモンドや栗のような甘い香りが引き立つ。燗にすることで旨みが深まり、酸味がよりジューシーに、苦味が上品に仕上がる。

この日本酒詳細を見る

9. 悦凱陣 山廃 純米酒 讃州雄町 無ろ過生

米の濃厚な甘みと柔らかな質感に対し、後味はすっきりとした超辛口タイプ。ナッツの香ばしさ、樽を想わせる甘くリッチなアロマが感じられる。ローストされたラム肉のやカレーのようなスパイスの効いた料理から濃厚なチーズなどの塩味や味わいがはっきりしたものと合わせると味わいが引き立つ。

この日本酒詳細を見る

10. 悦凱陣 山廃 純米酒 八反 無ろ過生

ローストしたナッツの香ばしさを感じる、芳醇な香り。とろみのある質感としっかりした味わいが特徴的。ジューシーな酸味と、爽やかな辛味と渋味が広がり、味わいにコントラストが生まれる。酢豚や甘酢漬けなどの酸味のあるものや、焼き芋やカボチャなどの自然な甘みを持つものと相性が良い。ぬる燗にすることでとろみのある質感と甘みが引き立ち、後味を柔らかくまとめ上げる。

この日本酒詳細を見る

11. 悦凱陣 山廃 純米酒 信州美山錦 無ろ過生

穀物の香ばしさとハーブのような甘みのある香り。口に含むと凝縮感のある味わいが口いっぱいに広がる。胡椒のようなスパイシーでキレのある超辛口タイプ。シャープなキレは鶏鍋、鶏もも肉のごぼう煮など、旨みを持つ料理との相性が◎。ぬる燗で、浅く口の広い酒器で飲むことで旨みと後味を存分に楽しめる。

この日本酒詳細を見る

12. 悦凱陣 純米酒 オオセト 無ろ過生

香辛料や穀物などの複雑な香りに、力強い旨みとキレが加わる。讃岐うどんなど、香川県の郷土料理との相性は抜群です。またパンチのある力強い旨味は、ピザやミートボールなどのこってりとした料理と合わせても◎。60℃に温め、50℃まで冷ますと風味が豊かになりジューシーな酸味と山椒のような苦味が力強い旨味を引き締める。陶器の酒器と合わせることで、滑らかな質感が楽しめる。

この日本酒詳細を見る
まとめ1

徹底的にこだわり抜かれた酒米から感じられる、しっかりとした米の旨みが特徴的な悦凱陣。酒器や温度帯で表情がガラリと変わる印象は飲み手を魅了させる。米本来の甘みとコクが引き出され、口いっぱいに広がる。ボトルによる違いはあるが、まさに「濃醇旨口」と言える酒だ。 お酒単体でももちろん楽しめるが、しっかりした味付けの料理や、香辛料が効いた料理などに合わせても存在感のある味わいは唯一無二。ひとつひとつの米に合わせた酒質設計や、昔ながらの和釜と木製の甑を使うなど、丁寧に手間がかけられている。生産量が少なく、入手困難とも言われるが、一度飲んだら忘れない強烈な個性を持つ丸尾本店は今後も目が離せない。

テイスティングコメント:ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) 【ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) プロフィール】 株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 海外PR・企画、輸出事業部長 SEC Certified Advanced Sake Professional WSET® Sake Level 3 Educator ニュージーランド出身の日本酒専門家。 2016年からIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門の審査員を務め、企業や5つ星ホテル、世界有数のレストラン向けの日本酒コンサルタント、日本酒教育、世界市場向けのトレーサビリティーのあるマイナス5℃の日本酒輸出システムの開発などに携わり活動中。
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
日本酒をより楽しめるアプリSakenomyを今すぐダウンロード!
TOP