節分の恵方呑みにぴったりな日本酒10選
更新日2023.1.24
旧年の厄を払い、新年の幸福を願う節分。「鬼は外、福は内」と豆をまく厄除けや恵方巻きがおなじみですが、近年広がりつつある「恵方呑み」をご存知でしょうか。恵方巻さながらに、福徳を司る神である歳徳神の在する方角(恵方)に向かって、願い事をしながら日本酒を飲むことで万事吉とされると言われています。そこで、今回は「恵方呑み」におすすめしたい日本酒をセレクト。恵方巻に合う味わいや縁起のいい銘柄、節目にふさわしい特別なアイテムなど10本をご紹介します。令和5年(2023年)の節分は2月3日、恵方は南南東です。ぜひお好みの日本酒と酒器を用意し、福を呼び込んではいかがでしょうか。

出羽鶴 awa sake 明日へ
「出羽鶴」「やまとしずく」「晴田」を醸す出羽鶴酒造と、「刈穂」を醸す刈穂酒造の2つの蔵を有する秋田清酒。「出羽鶴 awa sake 明日へ」は、酒蔵周辺地域で契約栽培した酒造好適米「秋田酒こまち」で醸されたawa酒(高品質なスパークリングタイプの日本酒)です。
飲まれるシーンがハレの日であり、門出、誕生、挑戦、感謝、再会など、人々を祝福し、その人々の未来を讃える酒でありたいと「明日へ」と命名されました。揮毫は、秋田市在住の女性書家である長沢薫さんによるものです。
ラベルのデザインも植物の新葉、風になびく旗、羽ばたく翼をモチーフにし、未来へ続く想いや自らの道を進む誇りを表現。新たな福を呼ぶ恵方呑みにふさわしい縁起のいい1本です。
紀土 KID 純米大吟醸 Sparkling
代表銘柄である「紀土」は“紀州の風土”と“KID”から名づけられました。子どものような天真爛漫さをイメージし、さらに若い飲み手を育てていきたいという想いが込められています。様々なコンペティションでの受賞歴を誇る一方、梅酒「鶴梅 すっぱい」をベースにした「キットカット」の発売やコンセプトショップ「平和酒店」のオープンなど、多彩なアプローチで日本酒の魅力を発信。
ご紹介するこちらは、ボトル上部に「ぼくらのジャパンスパークリング。」と書かれている通り、海外のスパークリングワインを真似ることなく、日の丸を背負い、日本の技術を集結した渾身の1本です。暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い節分に、淡雪を思わせるような霞がかったお酒で乾杯を!
陸奥八仙 V1116
全国有数の漁師町で知られる青森県八戸市に蔵を構える八戸酒造。漆喰土蔵や赤レンガ蔵など、大正年間に建設された6つの建造物が「文化庁登録有形文化財」「八戸市景観重要建造物」に指定されています。
定番酒である「陸奥八仙」「陸奥男山」のほか、斬新な試みのアイテムも多く送り出し、新たな日本酒ファンを開拓。ユニークな名前の「陸奥八仙 V1116」もそのひとつで、清酒酵母ではなく、主に白ワインの醸造に使用されるデンマーク産の酵母「Lalvin ICV K-1 V1116」で醸した挑戦的な1本です。
目を瞑って飲むと本物の白ワインと思う方も多いはず。キリッと冷やせば酸が強調され、温度が上がると甘味が味わいの中心に広がります。恵方巻を白ワインに合わせるようなニュアンスでぜひ。
一白水成 premium
遡ること300余年、江戸・元禄元年(1688年)創業の歴史ある福禄寿酒造が蔵を構えるのは、田園風景が広がる秋田県五城目町です。東北一といわれる穀倉地帯を活かし、地元の農家さんとパートナーシップを組み「五城目酒米研究会」をつくりました。
属する農家さんが作った酒米の中で「その年で一番」と蔵が厳選した酒米で醸されるのが「一白水成 premium」。落ち着いた吟醸香で、口に含むときれいな酸とお米の香りが鼻から抜けてゆきます。キレのよい後味で食事とも好相性。純米大吟醸規格でありながら、心地よいボリューム感が楽しめます。
「一白水成」とは、「白い米と水から成る、一番旨い酒」の意。特別な思いが込められたお酒で、新たな年の福を祝ってみては?
若波 純米吟醸
大正11年(1922年)、今村本家酒造の分家として創業。蔵の傍を流れる筑紫次郎(筑後川)の若々しい波の姿より「若波」と銘名されました。若いチームで醸される味わいのコンセプトは「味の押し波、余韻の引き波」。
波のように味がさっと押し寄せてくるけれども、すっと引いていくというイメージで、ラベルからもお酒の個性が連想させられます。地元福岡県糸島産の山田錦と福岡県三潴産の夢一献を使用した「若波 純米吟醸」は、透明感漂う瑞々しい味わい。抜栓すると、穏やかな吟醸香が立ち上り、バランスのいい酸味と旨味が広がり、すっと消えていきます。
その波のようなインパクトある味わいは、恵方呑みでいただくお酒にぴったりではないでしょうか。
前 純米吟醸
日本で最初に造られた磁器である古伊万里で有名な佐賀県伊万里市に位置する古伊万里酒造。定番酒「古伊万里」に加え、4代目夫婦によって2009年より限定流通酒として発売されたのが「前(さき)」です。
「前を見て新たな時代を築け」という想いのもと、佐賀ローカルに留まらず、全国区の日本酒という方向性で酒質を設計しました。そんな想いの通り、「前」は数多くの国内外のコンペティションで輝かしい評価を得ています。「前 純米吟醸」も佐賀酒らしい濃醇な甘味を宿しながらも、現代の日本酒ファンに好まれるエレガントな吟醸香と透明感のあるさらりとしたタッチが共存。
世界的評価を受ける日本酒を片手に、前(恵方)を向き、願いを唱えてください。
龍力 テロワール 東条
酒米「山田錦」の主産地である兵庫県姫路に蔵を構える本田商店。蔵の使用米の85%を山田錦が占めています。
昨年11月には、本社に山田錦を育む土壌標本に囲まれながら試飲することができる「龍力テロワール館」がオープンしました。最高品質の山田錦が栽培される「特A地区のa」とは、兵庫県の社地区、東条地区、吉川町を指しますが、本田商店では、それぞれのテロワールを表現した3本を同時にリリース。
仕込み水、精米歩合、使用酵母などすべて同じ条件で造られているので、それぞれの土壌の個性を伝えてくれます。中でも、香り、味わい、酸、余韻、すべてのバランスが整うのが「龍力 テロワール 東条」です。酒米の王様とされる山田錦の中の最高峰をぜひ恵方呑みに。
貴 純米大吟醸 ドメーヌ貴 2019
5代目である永山貴博さんが杜氏に就任したのは2001年のこと。翌年から「貴」を全国に展開し、幅広い層に愛されています。「世界に通用する醸造酒『SAKE』として普遍の価値を纏えるよう、酒蔵の土壌や風土を反映させた此処でしかできない個性を磨く事が私達の酒造りへの哲学」と常々語り、地域の生産者の意味を持つ「ドメーヌ」と冠したこちらのお酒にも表現されています。
地元山口県宇部市において、酒蔵から5㎞圏内にある田んぼで蔵人たちが栽培した山田錦を100%使用。柔らかな口当たりでシルキーな印象で、山田錦の旨味を存分に感じさせてくれます。魚介とも引き立て合う懐の深い味わいですので、恵方巻やイワシといった節分に欠かせない味わいと共にどうぞ。
十四代 龍の落とし子大極上生
入手困難な幻の酒として人気を誇る「十四代」を醸す高木酒造。もともとは「朝日鷹」という地元に根付いた銘柄を造っていましたが、14代目である高木辰五郎さんが、「十三代」「十四代」「十五代」「十六代」等を登録商標に申請を行い、数字は登録商標出来ないルールだったのですが、人物名に間違えられたのか奇跡的に「十四代」だけ通ったことで名付けられたそうです。
門外不出の酒造好適米「龍の落とし子」を18年もの歳月をかけて開発したことでも知られています。15代目の顕統さんへと受け継がれると、蔵元杜氏として芳醇旨口と表現される「十四代」を確立し、プレミアムなお酒へと成長を遂げることに。とっておきの一本で、思い出に残る恵方呑みを。
石鎚 純米大吟醸 VANQUISH
蔵を構える愛媛県西条市は、良質な自噴水「うちぬき」で有名で、石鎚山からの清冽な仕込み水に恵まれたエリア。平成11年(1999年)に杜氏制を廃止してからは家族を中心とした体制で、一貫して「食中に活きる酒造り」をモットーに、3杯目からグッと旨くなる酒を目指しています。「石鎚 純米大吟醸 VANQUISH」は、創業100周年に愛媛県産にこだわった記念酒。
“酒造りは、常識を打ち破ることで進化する”という想いのもと醸された一本で、愛媛県産の松山三井を極限の25%まで磨き上げ、長期低温にて約30日間発酵した純米大吟醸です。ボトルには伊予水引が飾られ、専用ボックスは西日本最高峰の石鎚山をモチーフにしたデザイン。まさに福を招くおめでたい1本です。
まとめ

今回は、節分を目前に「恵方呑み」におすすめしたいアイテムをご紹介してまいりました。季節の移ろいを感じつつ、日本の伝統文化によって醸し出されるお酒を味わうのは粋なもの。古くより伝わる年中行事との結びつきもまた日本酒の魅力といえるでしょう。ちなみに、豆や恵方巻のほか、鬼を追い払えるとされるイワシ、蕎麦、こんにゃく、くじら、けんちん汁なども、節分に食べると縁起がいいとされています。ご自宅で気軽にできる、大人の節分。ぜひ思い思いの日本酒を片手に、福を呼びこみ、願いを叶えてください。