連載第8回 有名料理人が語る料理と日本酒

全国から肉好きが殺到する 和牛会席料理の名店 おにく花柳 片柳氏が選ぶ日本酒5選

更新日2021.09.24

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飲食店のプロが日本酒と料理の合わせ方のコツを提案する連載8回目は、東京の“肉割烹”の先駆け店として人気を集める人形町『おにく 花柳』が登場。和牛のみを使用した会席料理が評判を呼び、2016年のリニューアル以来、5年連続でミシュランの星を獲得。ホテルの洋食部門で働いた経験も持つ店主の片柳 遥氏が目指すのは「銘柄にとらわれることなく、和牛の個性とおいしさを伝える料理」。日本酒にも造詣が深く、この店でその魅力に開眼したという常連客も多い。パワーをもたらす“肉尽くしのコース”と日本酒の組み合わせとは?

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「店がオープンした2006年頃は、空前のシャンパーニュブームで、鮨にシャンパーニュを合わせる“鮨シャン”という言葉もよく聞かれた時代。和食とワインを楽しむスタイルが注目を集めるなかで、日本酒と牛肉料理は合わないんじゃない? とお客様に言われることもありました。でも、お米の旨みが生きた日本酒と和牛の料理が合わないわけはない。自分でいろいろなタイプのお酒を飲むうちに僕自身もどんどん日本酒の奥深さや楽しさに魅了されていきました」と話す片柳さん。

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東京で“肉割烹”といえば、まずその名が挙がるほどの人気店には、趣向の凝らされた和牛料理はもちろん、豊富に揃う日本酒を楽しみに訪れる人も多い。 2万4200円のコースには9品前後が登場するが、その主役を張るのは和牛。「幼い頃に父親が焼いてくれた分厚いステーキが僕のご馳走の原点。料理人を目指すなかで和牛という食材に出合い、自分で店をやるなら和牛を使った“ご馳走”を楽しんでいただきたいと思った」と話す。 いまでは世界共通語となった“WAGYU”だが、片柳さんが心にとめているのは、余計な手をかけずにありのままの美味しさを引き出すことと、銘柄主義に走らないこと。ポリシーを持って一定の銘柄牛を仕入れることを否定はしない、としたうえで「牛とひと言で言っても、人間と同じでそれぞれ個性がある。ブランドで選ぶことが悪いというわけではなく、僕はラベルではなく肉を見ることが大切だと思っています。一部の生産者さんにしかスポットが当たらないという状況にすごく危機感を持っていて、だからこそ自分の目で判断する力と経験を養うことが大切だと感じています。それは日本酒を選ぶ場合にも共通していますね」。

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日本酒好きを公言している片柳さんのもとには、入手困難と言われるお酒が集まることもしばしばあるが、どんなときで心がけているのが“銘柄びいき”にならないこと。純米大吟醸や純米吟醸などの特定名称は、あくまでスペックのひとつであり、当然、酒の良し悪しを判断する基準のものではないとも付け加える。 「単純に飲食店としての利益を考えたら純米大吟醸酒を多く揃えたほうがいいと思うけれど料理と一緒に楽しんでいただくお酒となると、香りが華やかすぎたり、こってりと濃厚なタイプはトゥーマッチに感じる場合もあります。ペアリングと言っても一気に料理を食べてお酒を飲む、ということではないので、僕は余韻の重なり合いを大切にしたいと思っています」

和牛サーロインしゃぶしゃぶ ポン酢ゼリー とまと素麺 × ALPHA ⾵の森 夏の夜空

「暑い日のひと皿めには、酸が爽やかな「ALPHA 風の森 夏の夜空」を。和牛のサーロインにはしっとりとした脂の甘みがありますが、そこにトマトの酸と自家製ポン酢のジュレで爽やかさを添えています。トマトの酸味と甘みの余韻にさりげなく寄り添うお酒を考えたときに、大人のラムネのような清涼感があって、コースのはじまりにもぴったりな「ALPHA 風の森 夏の夜空」が真っ先に思い浮かびました。シュワッと微発泡な飲み口も心地よく、瑞々しくてキレがいい。後味もフレッシュなので、和食に限らずフレンチの軽やかな冷前菜にも合うと思います」(片柳さん)

油長酒造株式会社|奈良県
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和牛すね肉のシチュー × 光栄菊 月光 無濾過生原酒

「隠し味に味噌やたまり醤油を使用している和牛のシチューは、常連のお客様にもご好評をいただいている人気の一品。コクを出すだけではなく、赤ワインビネガーやパイナップルビネガーで酸味を加えているのがポイントです。コク旨系の日本酒との相性は抜群で、とくに「光栄菊 月光 無濾過生原酒」と合わせたときは衝撃さえ感じました。天然乳酸菌仕込みで、口にふくむまえの香りはとてもおだやかですが、あとから旨みがどっと押し寄せてくるのが特徴。お酒単体だとややどっしりとした印象があるけれど、料理と一緒に味わうと、旨みと酸味がのびやかに調和するのを感じていただけると思います」(片柳さん)

光栄菊酒造株式会社|佐賀県
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和牛びふかつサンド × 仙禽 オーガニック ナチュール

「シャトーブリアンのびふかつサンドは頬張ったときに口に広がる味のバランス感を重視。ソースにマスタードや醤油、味噌なども使って、パン粉と香ばしさをリンクさせるようにしています。揚げ物の脂っ気をすっきりとさせるという意味でも、ソーヴィニヨンブランに似た酸が持ち味の「仙禽 オーガニックナチュール」は好相性。木桶、酵母無添加、生酛といった手のこんだ造りですが、白ワインに通ずる綺麗な酸があるので、たとえばイタリアンやフレンチのオードブル、スペインのピンチョスやタパスにも合うと思います。ワイングラスで味わえば、しなやかな酸をより感じられるはず」(片柳さん)

株式会社せんきん|栃木県
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和牛テール 賀茂茄子 ふかひれ × 東洋美人 壱番纏 純米大吟醸

「この料理の出汁にはテール出汁のほかに、鴨出汁や金華ハム、干し貝柱なども使用しているため、繊細な旨みに富み、味わいに透明感のある「壱番纏 純米大吟醸」を選びました。味がしっかりとした煮物に合う一番のポイントは、ふくよかさがありながら驚くほどキレがいいというところ。5度くらいに冷やしてもいいですが、煮物なら10~15度くらいで飲むのがおすすめです。料理と日本酒の旨みの相乗効果が生む余韻にずっと浸っていたいと思わせてくれます」(片桐さん)

株式会社澄川酒造場|山口県
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和牛の炭火焼き × 十四代 中取り純吟 赤磐雄町

「僕が“究極の食中酒”と呼ばせていただいている「十四代 中取り純吟 赤磐雄町」は香りが上品で味に丸みがあり、キレもよく、余韻もおだやかな素晴らしいお酒。たとえば、山形牛の炭火焼きなど“同郷”つながりで合わせることもありますが、ほんのりと炭の香りをまとった肉とともに味わった方は「これ以上の組み合わせはない」と感激されます。果実のようなニュアンスに、すっきりした酸味も。味のバランス感が見事」(片柳さん)

高木酒造株式会社|山形県
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まとめ1

「料理とお酒を合わせるときに一番大切なのは、自由に楽しむこと。ペアリングをご希望されるお客様はすごく飲み慣れている方と、お酒が好きだけど、選び方がよくわからないという方がいらっしゃると思います。最初から決め打ちでいくのではなく、お客様とコミュニケーションを取りつつ、反応を見ながらお好みのタイプのお酒をお出しするのも腕が鳴りますね(笑)。ペアリングの場合は、もちろん料理との相性ありきですが、たとえば“酸”の余韻に合わせると言ってもそれがポン酢なのか梅ダレなのか、ソースなのかよっても変わってくるので、それを柔軟に楽しめる心を持っていたいです」

レストラン写真

おにく 花柳

東京都中央区日本橋小舟町11-11 Kビル 1F☎03-3249-777617:00~23:00 日曜、祝日休み 14席(カウンター4席、個室4席&6席)http://www.karyu-tokyo.com/
取材・文:フードライター 小寺慶子 写真:フードライター 小寺慶子・おにく花柳
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