連載第5回 有名料理人が語る料理と日本酒

唯一無二の焼肉体験が待つ名店『蕃 YORONIKU』VANNE氏が選ぶ日本酒5選

更新日2021.08.20

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飲食店のプロが日本酒と料理の合わせ方のコツを提案する連載5回目は、焼肉の概念をくつがえすコース料理で多くの食好きを魅了している『蕃 YORONIKU』が登場。 いまでこそ、接待やデート需要を大きく伸ばしている焼肉だが、一頭買いや稀少部位、といったうたい文句を軽々と超越し、誰も体験したことがない魅惑の肉コースを供した『よろにく』は、焼肉業界のレジェンド的な存在に。 青山店に次ぎ、恵比寿の『蕃 YORONIKU』がオープンしてもなお、その人気と勢いは増すばかりだ。創業者の桑原VANNE秀幸さんが創り上げる焼肉ワールドにどっぷり浸るための日本酒の組み合わせとはどのようなものなのか?VANNEさんと同店の日本酒のセレクトをまかされたサービスの関井智也さんに、日本酒と焼肉の“至福の合わせ”について聞いてみた。

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焼肉好きのなかには、業界の進化と歩みを『よろにく』オープン以前と以降で語る人も少なくない。かつての焼肉店のイメージといえば、昭和レトロな店構えに店内を包み込む白煙、メニューはカルビにロース、タン、ホルモン…といったシンプルなものだったが、それまでの“焼肉店のデフォルト”に大きな風穴を開け、付加価値をもたらしたのが『よろにく』創業者の桑原VANNE秀幸氏だ。 2007年に青山・骨董通りの地階に店をオープン。いわゆる“高級焼肉”とも一線を画す、ムーディで洗練された空間は、たちまち食好きの大人の心を掴んだ。いまでは、コースで焼肉を楽しませる店もめずらしくなくなったが、その先陣を切ったのも『よろにく』。 DJやクラブオーナーの経験を持つVANNEさんは、もともと大の食好きで、時間を見つけては全国の焼肉を食べ歩いていたという。店をはじめるにあたって、まず考えたのは「いかにして焼肉を楽しんでもらうか」ということ。ゲストにこんなに素晴らしい肉がある、ということを体感してもらうのは大前提として、自分にしかできない表現方法で焼肉の美味しさ、楽しさを伝えるにはどうしたらいいかを模索した。「もともとのDJという職業柄もあって、いかにオリジナリティを出すかということをつねに考えてきました。その部分はいまも変わらずに大切にしています」とVANNEさん。

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『蕃 YORONIKU』では、現在、コースは11,000円から用意しており、肉の一品料理と焼物を織り交ぜた“セットリスト”は季節によっても変化する。 「焼肉は一般的に四季がないと言われるけれど、それなら自分が季節感を盛りこんだ焼肉コースをやってみようと。春は花山椒、夏はとうもろこし、秋は松茸や牛タンと一緒に食べていただく白子も人気です」。 日本で“唯一無二”の焼肉体験ができるという噂は、国内はもちろん、海外にも広まり、VANNEさんを訪ねてスターシェフが訪れることも多くある。みなが口を揃えて「和牛だから美味しい、という単純なことではない。肉とそのほかの食材の合わせ方やコースの流れが完成されていて、焼物の火入れが素晴らしいと言っていただけたのが嬉しかったし原動力にもなった」とVANNEさんは話す。 味が濃い赤身にはキャビアをのせ、塩味を添えたり、サシがしっかりと入ったザブトンは卵黄とトリュフで豊満な風味を際立たせるなど、肉好きを歓喜させる術において右に出るものなし。さらに、和の食材や季節感をふんだんに取り入れた焼肉となると、日本酒との組み合わせにも俄然、興味がわくというものだ。

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VANNEさんが「よろにくのコース構成を完璧に把握している」と紹介してくれたサービスの関井智也さんは、若い感性でVANNEさんの創りあげる焼肉のコースに合う日本酒を選び、ゲストに提案。その様子を間近で見ながら、VANNEさんも満足そうな表情を浮かべる。 「店では肉とキャビアの手巻き寿司を出すこともあるし、タンに昆布を合わせることもあります。よろにく発祥と言われるシルクロースなど、塩やタレだけの世界で完結しない焼肉のコースを提供しているので、味の芯部を理解していなければ、お酒の組み合わせを提案してもチグハグになってしまう。甘いものには甘みのあるふくよかな酒、料理の味に酸味が足りなければ日本酒で補うというような単純なことではなく、すべての風味が調和する組み合わせでありながら、オリジナリティを出すのが大切」と、VANNEさんが求めるハードルは高いが、関井さんの日本酒のセレクトからは、その思いを受け止め、具現化するセンスが感じられる。

サーロインの牡丹海老巻き × 黒龍 大吟醸

「鮨店のつまみにインスパイアされた海苔巻は、肉の甘い脂と牡丹海老の旨み、海苔の磯の香りのハーモニーを楽しんでいただきたいです。絹のようになめらかな口当たりの「黒龍 大吟醸」がすべての風味を丸く包み込むので、まずは巻物をひと口で、そのあとに日本酒を飲んでいただくことで、山のものと海のもの、そしてたおやかな米のすべての風味が口中で一体となるようなハーモニーを楽しんでもらえると思います。「黒龍 大吟醸」に限らず、お酒の提供の温度帯もとても大事。「黒龍 大吟醸」はきめ細やかでまろやかな風味が持ち味。上品な甘さやすっきりとしたフィニッシュの心地よさを感じるなら3~5度くらいに冷やすのがベストだと思います」(VANNEさん)

黒龍酒造株式会社|福井県
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和牛とイチジク巻きの冷製ごましゃぶ × 醸し人九平次 純米大吟醸 human

「和牛のしなやかな旨み、熟したイチジクのジューシィさ、コクのあるごまだれにしっかりと寄り添ってくれるのが、「醸し人九平治のhuman」。白桃やメロンのようなとろりとした果実感が感じられ、よく冷やすことで瑞々しい風味が際立ちます。旨みのなかに、かすかに感じるハーブのような苦みがごまだれの香ばしさやコクにも自然と重なるのも初夏らしい清々しさを感じられるポイント。滑らかな口当たり、エレガントな酸の完成されたバランス感を堪能するためにも、ぜひワイングラスで」(関井さん)

株式会社 萬乗醸造|愛知県
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肉もろこし × 酉与右衛門 夏ぎんが 純米吟醸 生原酒

「夏のよろにくのスペシャリテといえば肉もろこし。トウモロコシの芯の部分がお肉だったら面白いかなと思い、いまの形に辿り着きました。咀嚼するたびに口いっぱいに夏の香りが広がるので、ここはもちろん夏酒で。「酉与右衛門 夏ぎんが 純米吟醸」は涼しげなラベルデザインに違わず、飲み口もとてもさわやか。直汲みの生原酒ながら、アルコール度数が14%と低いので、味わいも軽快でするすると飲めてしまいます(笑)。ただ軽いだけではなく酸味がキリリとしているので食前酒として提供するのもいいですね。肉もろこしと涼やかなこのお酒で大人の夏休み気分を味わってもらえたら」(VANNEさん)

合資会社川村酒造店|岩手県
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小腸(焼物) × 超王祿 本生

「ほかの内臓肉と比べて脂の多い小腸は、外側に皮膜をつくるイメージで焼き上げると、食べたときに旨み濃厚な脂がじゅわじゅわと口いっぱいに広がります。キンキンに冷えたビールももちろん合いますが、うちでは自家製のポン酢で食べていただくので、風味に丸みのある「超王祿 本生」をあえて、オン・ザ・ロックで合わせていただくのも面白いと思います。ふんわりとフルーティーなニュアンスも感じられて、ポン酢の柑橘が香る丸腸に抜群に合います」(VANNEさん)

王祿酒造有限会社|島根県
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シャトーブリアンのロゼ カツサンド × 勝山 献 純米吟醸

「しなやかな旨みをたたえたロゼ色シャトーブリアンのカツを支える薄衣と網上で焼き上げる香ばしいパン、そして門外不出のソースが完璧なバランス感で合わさったカツサンドには、しっかりとパンチのあるタイプのお酒を。勝山酒造は、純米酒のみに特化した酒づくりをされている蔵で、香りも米の風味もとても豊かですが、濃厚な風味の料理との相性はとてもいい。デミグラスソースを使ったハンバーグやビーフシチューなどの洋食と合わせてもぴたっとハマると思います」(関井さん)

仙台伊澤家 勝山酒造株式会社|宮城県
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まとめ1

「焼肉店でワインを飲むことが当たり前となったように、季節感を取りいれた焼肉のコースと日本酒の組み合わせを楽しむのがもっと身近になってもいいと思います。肉とひと言でいっても、脂の多さや赤身の濃さ、とろけるような食感など肉質や部位によって味の個性はさまざま。焼肉自体はほぼひと口で完結する食べ物ですが、一品料理を織り交ぜコースの構成はもちろん、肉自体の香りや風味、タレや塩を合わせたときの相性なども考えて、焼肉と日本酒の新境地について考えていきたいです」。

レストラン写真

蕃 YORONIKU

東京都渋谷区恵比寿1-11-5 GEMS恵比寿8F☎03-3440-462917時~23時LO(完全予約制) 無休https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13211927/
取材・文:小寺慶子 写真:小寺慶子・蕃 YORONIKU
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