連載第4回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

綺麗な酒質、まろやかな旨味とキレの良さで人気の『日高見』7本を飲み比べてみた

更新日2021年11月12日

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宮城県石巻市で 1861 年より続く平孝酒造。日本酒低迷の平成初期、5代目・平井孝浩氏が蔵の存続をかけて銘柄を「日高見」に統一し、渾身の酒造りで全国に名を知られるブランドへと復活を果たした。また、東日本大震災では、「一麹、二酛、三造り」といわれる蔵の心臓部、麹室、酒母室、発酵室も大きなダメージを受けたが、多くのファンからの支援に対して酒質のさらなる向上で恩返しがしたいと、単に復旧にとどまらず、最高の酒作りをするための最上・最新の設備で“進化させて復興”という気概を持って蔵を大改修。発酵室は総ステンレス張りにするなど温度と衛生管理も徹底させている。

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世界三大漁場の一つといわれる三陸・金華山沖を抱える港町の蔵元とあって、「魚でやるなら日高見だっちゃ」がテーマ。透明感があり、辛口ながらもほのかな甘み、コクや旨味などバランスが良く、後味はすっきりとして魚介類との相性が抜群。食中酒として万能と人気の高い日高見7種を飲み比べてみた。

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1. 日高見 天竺 純米吟醸 愛山

フルーツの優しい香り、米からくる繊細な甘みと旨味が口の中で広がる。芳醇な味わいに、柑橘系の爽やかな酸味と苦味がバランスよく加わり、穏やかでボリューム感がありながらも後味すっきりという愛山の特徴がよく表れている。貝類全般、白身魚のカルパッチョやセビーチェなどと。

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2. 日高見 純米大吟醸 助六

フレッシュハーブのようなクリーンで爽やかな香り。優しい甘さが口の中でふわっとふくらみ、そのあと柑橘類の皮のような心地良い苦味、白胡椒的スパイシーさが表われる。サラダ、特に生春巻きやチリドレッシングのシーフードサラダなどタイやベトナム料理、グリル野菜、スモークサーモンなどと相性がよい。

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3. 日高見 芳醇辛口 純米吟醸 弥助

熟したフルーツの落ち着いた香り。まろやかな甘みが口の中で広がったあと、旨味を凝縮した芳醇な味わいと酸、塩分を感じるミネラル感が表れ切れ味抜群。刺身や貝類、脂ののった魚の塩焼きや鰻の蒲焼などに。また、乳酸的な味もあり、クリーム系のパスタやチーズ系の料理にも合う。

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4. 日高見 純米 短稈渡船(渡船2号)

甘いフルーツに加えて生クリームやバターを感じる芳醇な香り。酒米「渡船2号」の特徴である甘味、旨味が口の中で膨らむ凝縮感のある味わいながら、ジューシーな酸味、長い余韻の後に感じるミネラル感のバランスがよく、後味はすっきり。魚介類はもちろん、トマトソースのパスタやピザなど塩味や旨味のある料理にも自然にマッチ。

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5. 日高見 純米 山田穂

熟したメロンやバターなど柔らかく甘い香り、滑らかな口当たり。甘い穀物や蜂蜜のようなまろやかで豊かな味わいに柑橘系の心地よい苦味がアクセントとなってバランスを取っているので、マグロやカツオなど鉄分の旨味が強い魚の刺身やイカの炒め物、シュウマイなどの中華料理など味のはっきりしたつまみなどに。

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6. 日高見 純米 山田錦

フルーツの優しい香り。お米から引き出された自然な甘みと旨味、酸味など五味がバランスよく調和した控えめな味わい。後味に白胡椒やレモンピールの清涼感もあり、牡蠣や鯛など白身魚の昆布〆、アジの干物や西京焼きなど様々な魚介料理、おでん、揚げ出し豆腐、トマトを使った料理や焼き野菜など多くの料理の美味しさを引き立ててくれる万能な食中酒。

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7. 日高見 超辛口 純米酒

落ち着いた芳醇な甘みと風味がある香り。日高味の特徴であるすっきりとした味わいの中にあるまろやかな旨味とキレの良さを感じることができる。ラベルは「超辛口」とあるが、優しい甘さとコクがあり、酸味と辛さのバランスが良く飲みやすい。鯖の燻製をはじめ魚介類はもちろん、鶏肉、豚肉とも相性が良い万能酒。また、醤油、味噌、チーズなどの発酵食品を使った料理にも◎。

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まとめ1

魚介類との相性抜群と言われる日高見。確かに、全体的に香り穏やかですっきり飲みやすい。辛口といっても、淡麗辛口ではなく、米本来のコクや旨味がバランスよく引き出され、舌の上で甘味がふわっと広がりながらもすっと消える。それでいて苦味で骨格をしっかり作っているため、いい意味で余韻を引きずらず、すっきりとした後味になる芳醇辛口タイプが多い。すっきりしつつも豊かで優しい印象で、とても親しみやすいのも特徴。ずっと飲み続けられる造りは、「食事とともに酒がすすみ、楽しくなってほしい」という蔵元の思いの現れに違いない。食中酒として愛されている所以がわかる。

テイスティングコメント:ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) 文章:藤田実子 写真:JCSC・平孝酒造 【ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) プロフィール】 株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 海外PR・企画、輸出事業部長 SEC Certified Advanced Sake Professional WSET® Sake Level 3 Educator ニュージーランド出身の日本酒専門家。 2016年からIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門の審査員を務め、企業や5つ星ホテル、世界有数のレストラン向けの日本酒コンサルタント、日本酒教育、世界市場向けのトレーサビリティーのあるマイナス5℃の日本酒輸出システムの開発などに携わり活動中。
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