連載第18回 有名料理人が語る料理と日本酒

ヨーロッパのチーズ文化を日本に広めた立役者『フェルミエ』会長の本間るみ子氏が選ぶ日本酒5選

更新日2022年02月04日

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飲食店のプロが料理と日本酒の合わせ方のコツを提案する連載18回目は、生産者の顔が見える“農家製”のナチュラルチーズ専門店の先駆けとして知られる『フェルミエ』の会長・本間るみ子さんが登場。 日本中がバブル景気に沸いた1986年。ヨーロッパの食文化と切っても切りはなせないチーズにスポットを当て、その伝統の味を日本に広めるべく一念発起をした本間さん。アメリカ遊学中にナチュラルチーズと出合い、帰国後、チーズの大手輸入業商社で働くうちに、どっぷりとその奥深い世界に魅了されたという。 もともとの旅好きが高じてヨーロッパ各地をめぐるなかで、ヨーロッパの歴史とチーズの深い関係性を知り「この文化を日本に伝えたい」という本間さんの思いが強くなったことで『フェルミエ』が誕生した。

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「チーズの輸入会社を退社して、ヨーロッパ周遊のユーレルパスを買い、鉄道の旅をしました。まずは、パリからスタートして、スペイン、イタリア、スイスなど1ヵ月半ほど巡りました。貧乏旅行でしたが、町で買って食べるチーズも楽しみました。その後、新橋で小さなサンドイッチ店をやっていた頃に、レストランの評価本『グルマン』を知ったことは大きかったですね。こんなにフランス料理のレストランがあるなら、チーズ卸をやってみたら面白いのではないかというアイディアが浮かんだのです。フランスの修行から戻ったシェフたちに懇意にしていただいたおかげで、本格的に輸入販売の会社を創業しようと思いました。」

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“チーズ大国”として知られるフランスには、街や村の数だけチーズがあると言われているが、本間さんはフランスに限らず、世界中の生産者のもとを自らたずね、信頼関係を築き上げてきた。その結果、1997年にパリで行われた国際農業見本市のフランス農水省主催のコンクールでは、日本人として初めてチーズ部門の審査員を務め、同時に日本でも『フェルミエ』の名が広く知られるように。 自身も“チーズのあるくらし”を楽しむ本間さんが普段飲むのはもっぱらワインだが「じつは日本酒が持つ酸とチーズの酸はとてもよく合うんですよ」と微笑む。

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チーズは大きくわけて、旨みが強く余韻の長い加熱圧搾タイプ(パルミジャーノ•レッジャーノ、コンテなど)、山羊の乳からつくられるシェーブル(シャビシュー•デュ•ポワトゥ、ヴァランセなど)、内部に繁殖した青カビによる独特な風味が特徴の青カビタイプ(フルム•ダンベール、ロックフォールなど)、製造の途中で加熱をせずにプレスする非加熱圧搾タイプ(テット•ド•モワンヌ、ゴーダなど)、外側を酒などで洗ってから熟成をさせるウォッシュタイプ(エポワス、モン•ドールなど)、白いカビで表面が覆われた白カビタイプ(ブリ•ド•モー、カマンベールなど)に分類される。『フェルミエ』でも、200種前後のさまざまなチーズを扱っているが、上記に挙げた種別のなかから本間さん自身も「感激した」という日本酒とチーズの組み合わせをご紹介しよう。

シャビシュー•デュ•ポワトゥ × クラシック仙禽 無垢

「日本酒にもトレンドがあるように、チーズにもそのときどきの流行があります。その旬な組み合わせとしてご紹介をさせていただきたいのが、フルーティーで軽快な「クラシック仙禽 無垢」と新鮮なヤギ乳(全乳)だけを使ったフレッシュチーズです。まったりとしたコクとすこやかなミルクの味が感じられる、初心者でもとっつきやすい味わいですが、そこに日本酒のきれいな乳酸感がとても合うと思いました。最初はほんのりとしたガス感があり、時間がたつにつれてキメの細かい舌触りになってくるので、チーズのまろやかなテクスチャーともリンクします。脂肪分が多く、酸味と塩気のあるチーズと相性がいいと思うので、2週間ほど熟成させたブリヤ•サヴァランなども合わせてみたいです」

株式会社せんきん|栃木県
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パルミジャーノ•レッジャーノ × 竹鶴 秘傳 純米

「「竹鶴 秘傳 純米」 は食中酒としても非常に素晴らしいお酒。旨みはしっかりとしているけれど、香りがおだやかで酸ののりかたもやさしいので、セミハード系のチーズに合わせてちびりちびりと飲みたいです(笑)。最低2年間熟成をさせるパルミジャーノ•レッジャーノは旨みの凝縮体で、素朴かつ力強い味わいの純米酒との相性は出会うべくして出会ったという感じ。若めのペコリーノやゴーダーチーズも合うので、ホームパーティーやおうちで飲むときにぜひ試していただきたいです」

竹鶴酒造株式会社|広島県
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エポワス × 花巴 情熱 木桶仕込 木樽貯蔵 山廃純米酒

「ワインとチーズは余韻が長いもの同士を合わせるのがいいと思うのですが、余韻の長さという意味で驚いたのが、「花巴 情熱 木桶仕込 木樽貯蔵 山廃純米酒」。チーズの風味をどこまでも伸ばしてくれる印象があったので、迷わずエポワスを選びました。古くから美食家に愛されてきたチーズで、ブリアン•サヴァランが“チーズの王様”と称賛したことでも有名。冬場は10度くらでい保存して食べるときに常温に戻し、とろとろになったところでスプーンですくって食べるのがおすすめです。そこにこのお酒を合わせると、しなやかな旨みがどこまでも優雅に伸びていくよう。ちなみに、ブルー系のチーズも合わせてみたのですが、お酒の余韻が長いゆえにチーズの苦味が立ってしまう感じでいまひとつ相性が良くないように思いました。おなじウォッシュタイプで2~3月がもっとも美味しくなると言われるモン•ドールを合わせるのもおすすめ」

美吉野醸造株式会社|奈良県
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ブリ•ド•モー × 新政 陽乃鳥 貴醸酒

「貴醸酒のなかでも新政の陽乃鳥は、濃密な甘みと果実のような酸味のバランスがとても上品で、フレッシュ系のチーズ以外はオールマイティに合うと思います。そもそもヨーロッパでは食後にフレッシュ系のチーズを食べることはないので、デザートワインのように味わう貴醸酒との相性がよくないのは、そういう部分にあるのかもしれません。ブリ•ド•モーは、白カビタイプのなかでも最高峰と言われており、おだやかな風味のなかにしっかりとしたコクがあります。カマンベールと同じタイプに分類されますが、より力強い風味があるので、よく冷やした貴醸酒とともに味わうとその味わいが心地よく広がるのを楽しみたいです」

新政酒造株式会社|秋田県
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フルム•ダンベール × 黒龍 しずく

「フルム•ダンベールは、飽きのこない青カビタイプのチーズ代表。イギリスのスティルトン、イタリアのゴルゴンゾーラと並び、世界三大チーズと言われるロックフォールと同じタイプで、それに比べると塩味やブルーチーズ特有のクセが少なくマイルドです。「黒龍 しずく」は透きとおるようにクリアで上品なお酒で、口に含むとりんごやバナナのようなフルーティな香りが。ブルーチーズには、はちみつやドライいちじくを合わせることもありますが、このお酒であれば、シンプルにチーズとの相性を楽しみたい。透明感のなかに芸術性を感じる素晴らしいお酒だと思います」

黒龍酒造株式会社|福井県
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まとめ1

「私は新潟の佐渡出身なので日本酒はもともと好きだったんですが、今回、いろいろな組み合わせを試すなかで、チーズと日本酒はとても面白いなと思いました。コロナで海外はもとより、国内の生産者さんのもとを訪ねることもなかなか難しいですが、日本全国にはいま300以上のチーズのつくり手さんがいて、若い世代もとても頑張っています。日本酒も型にとらわれず、新しいお酒づくりにチャレンジしている方が多いと聞くので、チーズと日本酒でなにかできたら面白いなと思いました。日本酒にも季節ものがあるようにチーズにもその時期の旬があるので、今後は“旬合わせ”も試してみたいです。そして、自宅でも気軽にチーズを楽しんでいただけるように新しい提案も随時していきたいと思っているので、日本酒とチーズの可能性についても楽しみながら模索していきたいです」

レストラン写真

Fermier(フェルミエ)

愛宕店:東京都港区愛宕1-5-3 愛宕ASビル03-5776-7722月~金12:00 - 19:00   土11:00 - 18:00 ※商品販売のみの営業です(カフェは営業しておりません)日曜日・祝日・年末年始及び夏季休業日 ※場合によって日・祝の営業ありhttps://www.fermier.co.jp/
取材・文・写真:小寺慶子
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