連載第14回 違いがわかる有名銘柄飲み比べ

日本酒の常識を打ち破り、新しい風を日本酒業界に吹き込んだ「仙禽」12種類を飲み比べてみた

更新日2022年12月02日

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栃木県さくら市で1806年(文化3年)に創業した仙禽酒造は、2008年に十一代目蔵元・薄井一樹氏が専務取締役として就任し「株式会社せんきん」として一新。昔ながらの日本酒とうってかわって「ジューシーで甘酸っぱい」酒造りに挑戦し、現在の仙禽の代表的な味として定着させた。 日本酒業界ではタブーとされていた「甘酸っぱい」味を取り入れたのは、現在の蔵元・薄井一樹氏。日本ソムリエスクール出身の薄井氏が注目したのが「今の時代に合う日本酒」であった。洋食、中華、エスニックなど多国籍料理を食べるのが当たり前となった今、それらに合うには「酸」が足りないとソムリエの観点から着目し、独創的な味を取り入れ日本酒業界を轟かせた。 機械生産から昔ながらの伝統的製法へ変え、時代の流れに合わせた味わいを取り入れたせんきんが造る酒は若い世代からも人気を博している。

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原料となるぶどうの栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して担う生産者を指す意味として、ワインでよく使われる言葉「ドメーヌ」。せんきんは、2011年から "ドメーヌ化”を始め、蔵が建つ栃木県さくら市でしか生まれない酒造りにこだわり、米の栽培から酒の製造そして瓶詰めまで蔵が管理している。 原料となる「米」は仕込み水と同じ水脈のもので育ち、契約農家で栽培されている。酒米は「亀ノ尾」「山田錦」「雄町」の3種類のみ。厳選した農家が手塩にかけて育てたお米は、心白(しんぱく)が大きく、水分のバランスが良いため、酒造りに最適だ。

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「仙禽」のブランドは主に『ナチュール』『クラシック』『モダン』そして『プレミアム』の4つから成り立っている。 自然派の『ナチュール』は酵母無添加、木桶仕込み、生もと酒母、古代米の亀ノ尾を磨かないで造られるのが特徴で、自然の味わいを楽しめる。 『クラシック』と『モダン』は同じ酒米、精米歩合で造られておりスペックはほぼ一緒、大きな違いは製造方法。古くから伝わる生酛造りで造られた『クラシック』は仙禽の特徴でもある酸味と甘みがしっかり出ているのが特徴。現代の日本酒造りの基本である速醸酛(そくじょうもと)製法で造られた『モダン』は香り高く華やかな印象を感じさせる。 そして上質を味わう『プレミアム』シリーズは、優雅で上品な味わいを演出している。 完全無添加の超自然派『ナチュール』、様々な食事と楽しむのにピッタリな『クラシック』『モダン』から、特別な日に大切な人とゆっくり飲みたい 『プレミアム』シリーズまで12種類を飲み比べてみた。

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1. 醸

栃木県産の個性あふれる酒米「山田錦」「亀ノ尾」「雄町」の3品種を掛け合わせたアッサンブラージュ(ブレンド)。計算されて作られた「プレミアム」シリーズの限定酒は、洋梨や白桃の上品な香りに包まれ、なめらかで繊細な飲み口から徐々に豊かさと複雑さを奏でる。キレのある酸がバランスを整え、綺麗な後味を引き立てる。 上品なコクとキレがある味わいは、脂の乗ったトロや、ノドグロの塩焼き、コクのある魚の煮付けと合わせるのが◎。よく冷やして、ワイングラスで飲むのがおすすめ。

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2. 麗

洋梨、マスカット、青リンゴの爽やかな香りが特徴。上質を味わう「プレミアム」シリーズの「麗」は上品で、絹のように滑らかな舌触りと贅沢なコクを感じる。柑橘系の酸味が甘みを調和し、綺麗な渋みが長くすっきりした余韻を残す。 合わせる料理は、旨みが凝縮されたカニやエビの甲殻類、スモークサーモン、塩味の効いた生ハムやチーズなどがおすすめ。

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3. 仙禽一聲

「プレミアム」シリーズらしい特徴である、上品な香りと味わいは口の中で優雅に膨らみ、ダイナミックな酸味と心地よいハーブのような苦味が立体感を生み出し、洗練された爽やかな後味へと導く。 爽やかな酸味とハーブのアクセントが、アスパラガスやグリーンピースなどの野菜料理や、白身魚のバターソテーなどの味わいを豊かにしてくれる。

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4. 仙禽 オーガニック ナチュール

完全無添加、超自然派な作りで軽い口あたりの「ナチュール」は、イチジク、桃などジューシーな果物の中にほんのり優しいバナナブレットを感じさせる香り。芳醇な甘みと旨み、柑橘系の酸味が絶妙なバランスを醸し出す。爽やかでやや辛口の後味は、料理との相性が抜群。 ローストチキンや唐揚げ、焼鳥などの鶏料理からアジアン系テイストのスパイスやキムチを使った辛い料理など味わいにパンチのあるものとも良く合う。

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5. 仙禽 オーガニック・ナチュール ZERO

「ナチュール」のにごり酒「ZERO」はヨーグルトやヤクルトを連想させる乳酸系の香り。最初は優しく爽やかな口当たり、中盤では濃厚でジューシーな味わいが広がり、最後はキレのある酸を感じるのが特徴。飲みやすく、シーンを選ばず楽しめる1本。 キムチやサムギョプサルなどの韓国料理、濃いめに味付けされた料理やBBQでも活躍してくれる。

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6. クラシック仙禽 亀ノ尾

桃やライチ、蜜たっぷりのリンゴなどの柔らかなフルーツの香り。優しいコクの中に、グレープフルーツを感じさせる爽やかな酸が甘さとのバランスを取り、ハーブのような苦味が華やかな余韻を残す。 上品で爽やかな味わいには、レモンを絞った魚介のカルパッチョや、バターをたっぷり使った魚のソテー、海鮮料理との相性が良い。

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7. モダン仙禽 亀ノ尾

桃やライチ、ハーブのアクセントの魅力的な香りは、同じ酒米「亀ノ尾」を使った「クラシック仙禽」よりも際立って感じる。「亀ノ尾」の特徴である旨みやハーブの香りをしっかり感じられ、バランスも抜群。キリッとしたジューシーさと山椒のような苦味が爽やかな後味を引き立てる。 白身魚、地中海料理と合わせるペアリングが最もおすすめ。フレッシュなサラダや、様々なチーズと合わせるのも◎。

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8. クラシック仙禽 雄町

ライチや柑橘類のフレッシュな香りの中にほのかに優しい乳酸を感じる。最初に感じる甘い果実の味は中盤でミネラル感へと変化していく。シャープな酸味と渋味、そしてピチピチ感がリッチな味わいを持ち上げ、キレのある後味を演出する。 キリッとしたミネラル感のある味わいは、牡蠣やカルパッチョ、白身魚の天ぷら、貝類との相性が良い。ハーブを使ったあっさりしたパスタと合わせても◎。

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9. モダン仙禽 雄町

白桃やリンゴ、オレンジの優しく甘い香りにクリーミーな乳酸の香りが広がる。同じ酒米「雄町」を使った「モダン仙禽」より繊細な甘みと旨みを持ち合わせており、グレープフルーツのようなシャープな酸味と渋味がバランスをとり、後味にはほのかにミネラルを感じる。 甘み、旨み、酸味があるこのお酒は、酢飯との相性がいいので、白身魚やマグロの握り、ちらし寿司との相性が抜群。

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10. クラシック仙禽 無垢

マスカットや青リンゴ、桃の甘酸っぱい香りにフレッシュハーブのアクセントが効いている。柔らかく滑らかな口当たりでバランスが最高に良いのが特徴。栃木県さくら市産の山田錦の自然な甘み、旨みが広がり、仙禽の特徴であるジューシーな柑橘系の酸が爽やかな味わいに導く。友人や家族、みんなで気軽に楽しめる1本。 どんな食事にも寄り添うが、お刺身や白身魚のソテーなど魚料理と合わせるのがおすすめ。また、鶏肉、チーズを使ったものともよく合う万能酒。

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11. モダン仙禽 無垢

同じ酒米「山田錦」を使った「クラシック仙禽」に比べ、青リンゴや桃の香りが際立つ。舌触りは優しく滑らかで飲みやすい。「クラッシック仙禽」と比較すると風味はやや濃厚で凝縮されているのを感じる。米の甘みと旨みはしっかりでており、柑橘系の心地より苦味が残り、辛口の後味に仕上がっている。 苦味がアクセントになっているので、少し甘めの食材や油を使った料理と合わせるのがおすすめ。天ぷらやクリーミーなグラタンなどとの相性は抜群。

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12. ドメーヌ・パーラー ナチュール・シードル

日本のリンゴで作られたたシードルは、まるでリンゴジュースのように甘くジューシーな味わい。柑橘系の酸味と発泡性が、爽やかな後味に導いてくれる。 シードルにはフランスの伝統料理と。キッシュや塩味の効いてるハムやチーズを使ったガレット、クリーミーなリゾットや様々なチーズとの相性抜群。

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まとめ1

昔では考えられなかった“甘酸っぱい日本酒”を定着させ、日本酒の概念を変えたせんきん。若い世代からも支持される理由は、「日本酒が敷居が高いもの、難しいものではいけないと思います。」と述べる薄井氏の考え方や多彩なる才能、そして発信する力からだ。 日本酒を次の世代に繋いでいく必要性や、日本酒そして仙禽への想いを、日本酒業界の最先端を走る専務取締役兼十一代目蔵元である薄井一樹氏は、次のように語った。 「日本酒は時代によって変化させていく必要があると思います。こだわりやスペックに目がいきがちですが、飲み手や飲食店さんの立場になって考えていかなければいけません。そして一番大事なのは「伝え方」です。 若い世代や日本酒に興味がないユーザー層にも日本酒をリーチさせる事により、日本酒だけではなく日本の「ものづくり」の良さを知って欲しいと考えています。私達せんきんがアパレルブランド「ユナイテッドアローズ」などとコラボレーションする理由はその為です。日本酒とはかけ離れている「アパレル業界」にしかない潜在的なマーケットに日本酒の良さを知ってもらいたいと考えています。いくら良いものを造っても、美味しいものが存在しても知ってもらわなければ売れません。「知る」事がなければこだわりの製法も意味がありません。 コロナ渦で大変な飲食業界ですが、この期間に色々気付かせてくれて勉強になりました。特に流通や情報の発信、私達造り手があるべき姿や立場など色々見つめ直す事ができました。 そして、仙禽は「手に入らないもの」ではなくで、広くさまざまな層に知り渡り、飲んで頂きたいと考えています。」

テイスティングコメント:ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) 【ウイルソンライ レベッカ(Rebekah Wilson-Lye) プロフィール】 株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 海外PR・企画、輸出事業部長 SEC Certified Advanced Sake Professional WSET® Sake Level 3 Educator
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